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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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44/446

ふとん界のミステリーゾーン 〜大宮ふとん店、営業中かどうかは運次第〜

埼玉県上尾市の商店街の、さらにその外れ。

Googleマップでピンを立てても「このあたり」という曖昧な場所に、

今日もひっそりと――いや、堂々と――存在している。

「大宮ふとん店」。


創業は昭和40年代。麗奈の祖父が「寝る子は育つ!」を合言葉に立ち上げた老舗(自称)。

看板には誇らしげに「大宮ふとん店」と書かれている…が、

近年は「と」の字が完全に消えかけ、通行人には「大宮ふん店」と読まれている。

それでも誰も直さない。なぜなら「別に寝具に支障はないから」。


二階は住居兼倉庫。

祖母が80代現役店主として陣取る。

レジスターは数年前に「ピッ」と鳴って以来、沈黙を守り続けているが、

祖母の手元には伝家の宝刀・そろばん。

このそろばん、動体視力が異常なほど冴えており、暗算速度は電卓より速い。

しかも合っている。だいたい。


母はというと、午前中だけ顔を出す……が、店番というよりは

近所の主婦との情報交換所と化している。

「こないだの自治会長、また回覧板まわすの忘れたんだってよ」

「うちのタマ、最近あの白ブチの子と仲良くてねぇ」

――と、もはや話題は寝具から2光年ほど離れている。

気がつけば、地域猫が5匹ほど店の前で寛いでおり、

母と祖母は猫のえさやりタイムに夢中。


父は?

はい、リビングで競輪新聞を読みふけっている。

しかも昼から。

たまに電話が鳴っても「客か?」と誰も出ない。

「どうせセールスや」と決めつける鉄壁の無関心。


そして最大の謎――営業時間と営業日が完全に気まぐれ。

朝7時に開いているかと思えば、

翌日は夕方5時からひっそり開店。

定休日は「祖母の腰の具合次第」。

もはや営業カレンダーは存在しない。


店内は昭和の空気を閉じ込めたままのカオス。

“お値打ち品”と書かれた札が並ぶが、実態は売れ残りの在庫。

数十年前の座布団、未開封の蚊帳、なぜかサンタの寝巻き。

製造元がとっくの昔に倒産した昭和58年製造の電気あんかなど

「レトロ好きにはたまらん」と言いながら、誰も買わない。


にもかかわらず――潰れない。

なぜだか、潰れない。

上尾市七不思議の一つとして地元民に囁かれている。


噂では、祖母が自治会費の計算係をしていて、

帳簿の一部に“ふとん店の売上”が含まれているらしいが、真相は闇の中。


麗奈いわく――

「うち? 風通しのいい店みたいなもんよ。風、通りすぎてるけど」


そして今日も、“営業中”の札がかかっている。

いや、もしかしたら昨日のままかもしれない。

「大宮ふとん店」――それは、

上尾の商店街にひっそりと眠る、“眠りの国のテーマパーク”なのである。

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