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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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439/455

唯奈大迷惑⑪  理論上は無事。なお相棒は爆散

常陸太田市の山あい。

朝の空気がまだ冷たい畑で、唯奈は上機嫌だった。


理由は単純だ。

新しい相棒――トラクター 「蒼牙そうが」 が絶好調だからだ。


蒼牙は、

井坂農装(愛媛・松山本社の国内大手農機メーカー)が出した新型トラクター。

ミドルクラスながらトルク重視設計で、

・ディーゼル直噴

・四輪駆動

・低回転でも粘るエンジン

・ぬかるみでも沈まない足回り

という、地味だが実直な性能を持つ。


最新モデルらしく電子制御も入っているが、

派手な自動運転やAIは載せていない。

「人間がちゃんと使う前提」の、いかにも農機らしい一台だ。


唯奈はこの無骨さを気に入っていた。

「蒼牙は余計なことしねぇ。裏切らねぇ」

そう言って、毎日声をかけながら畑に出ている。


――その日も、蒼牙と並んでの野良仕事だった。


そこへ、

畑の奥から聞き慣れた低い排気音。

四駆特有の唸りを残しながら、

例の青いボンネットのSUV車が現れる。


唯奈は即座に手を止めた。


「……嫌な予感しかしねぇっぺ」


予感は外れない。

降りてきたのは、すみれコーチ。

その後ろに、諏訪精巧機電研究所の中村玲、稲生明日香、

そしてなぜか隼人補佐官まで揃っている。


玲が資料を抱え、言い出す。


「今回も被験者……いえ、唯奈さんのご意見を――」


「今、被験者っつったっぺ?」


「言ってません」


「言った」


このやり取りが済むと、もう止まらない。

試作品7号が、当然のように唯奈に装着される。


今回は様子が違った。

透視機能が明らかに向上している。


「おぉ……」

唯奈が目を細める。

「すみれコーチと玲さん、骨まで見えんぞ」


隼人補佐官が一歩前に出る。

「唯奈さん、次に僕にも――」


「絶対ダメ!!」

すみれコーチの即答。


ここまでは、まだ平和だった。


唯奈はそのまま蒼牙に乗り、耕作を再開する。

エンジン音、振動、操作感――すべて問題ない。


しかし数分後。

試作品7号が、何かを誤検知した。


最初は白煙。

次に異音。

そして――


ドォン!!


西部警察ばりの派手な爆発。

畑の一角が一瞬で火柱に包まれる。


唯奈は奇跡的に無傷だった。

だが――


蒼牙が、

見るも無残な姿で横倒しになっていた。


フロントカウルは歪み、

タイヤは一つ外れ、

愛媛生まれの実直な機械は、沈黙したまま動かない。


その瞬間。

唯奈の中で、何かが切れた。


「玲さん……何回目だ?」


低い声。

次の瞬間、烈火の如き茨城弁が炸裂する。


「理論上だの安全だの!

毎回毎回爆発してんじゃねぇか!!

蒼牙は実験台じゃねぇ!

オラの相棒だっぺよ!!」


「何回目だっぺ!?

 理論上安全って何回聞いた!?

 あんた本当に技術者か!?」


玲が言葉を失う。


「現場見ろ!

 オラたちと一緒に戦え!

 イベント立て!

 そうじゃねぇと分かんねぇんだっぺ!!」


すみれコーチ、即ノリ。


「あっ、それ良いわ!」


「えっ、私!?」

玲は完全に想定外。


さらに追い打ち。

「それより蒼牙はどうしてくれる!!」


隼人補佐官が小声で「保険…効くかな?」と言い、

完全に火に油を注ぐ。


「まだ月賦終わってねぇんだぞ……」


怒りは、悔しさに変わり、

唯奈は一瞬だけ言葉を詰まらせる。


そこで、すみれコーチが前に出た。


「私が直す」


「……コーチ、トラクター直せんのか?」


「輸送用車両なら何でも直すわ。

トラクターも、広義では輸送用車両でしょ?」


「……そうなのか?」


納得していないが、もう止まらない。

蒼牙は即座に解体され、

岐阜の秘密兵器・陸上輸送のスペシャリストでもある伊吹真白によって

カンガルーマークのトラックに積まれ、

群馬・太田の工場へと運ばれていく。


玲は呆然とその背中を見つめる。


「私……戦隊ヒロイン、向いてませんよね……」


唯奈は振り返り、きっぱり言った。


「だから来いって言ってんだ。

現場見ねぇ技術者が、一番危ねぇんだから」


蒼牙はただ、無言で運ばれていく。


――だが、この沈黙が、

次に“何か”を生むことだけは、

その場の全員がうっすら予感していた。

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