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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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433/453

唯奈大迷惑⑤  安全確認ヨシ!――なおオラは未確認

――人は、成功体験を得ると、だいたい調子に乗る。


群馬県太田市と長野県諏訪市をまたいだ、

すみれコーチと諏訪精巧機電研究所の共同開発チームは、

ついに“やった感”を手に入れていた。


「試作品第5号機……」


中村玲は静かに言った。


「今回は、暴発なしです」


技術者たちが一斉にうなずく。

なぜなら――


「中村玲、装着完了。問題なし」


若手技術者の中村玲が、実際に装着して動き回った結果、

何も起きなかったからだ。


爆発なし。

煙なし。

金ダライも落ちてこない。


「……これは」

すみれコーチが腕を組む。


「いけるな」


誰もが思った。

今度こそ、唯奈は助かる。


その頃、新橋のヒロ室。


ソファにだらっと座る唯奈、陽菜、美紀。

同い年トリオは、完全にオフモードだった。


「新橋ってさぁ、人多すぎだべ」

「わかります~。迷子になりそうです」

「私、駅の出口で毎回違う世界に出ます」


「常陸太田なら迷子になんねぇぞ」

「一本道で畑しかないですもんね~」

「……否定しづらい」


そこへ。


ガチャ。


「よっ」


嫌な声。


すみれコーチの背後に、

見慣れた銀色のケースを抱えた中村玲と技術者たち。


唯奈は反射的に立ち上がった。


「……嫌な予感しかしねぇ」


「え~?それ何ですか~?」

陽菜が目を輝かせる。


「新装備ですか?」

美紀も興味津々。


「……あんまり良いモンじゃねぇっぺよ」

唯奈は本音を漏らした。


中村玲が一歩前に出る。


「今回も、被験の……いえ、唯奈さんのご意見を取り入れた改良版です」


「また被験者って言ったっぺ?」

「い、言ってません!」


「言った」

「言ってないです!」

「言ったって顔してる」


「……」


場が少しだけ和んだ。


「今回は私も初めて装着しましたし、大丈夫でした」

玲が胸を張る。


「初めて着けたって、

 それ今まで誰も着けてねぇってことだっぺ?」


「……」


正論だった。


装着。


スイッチオン。


……何も起きない。


走る。

跳ぶ。

止まる。


「……おお」

唯奈の表情が変わる。


「これ、いいな」


一同、息をのむ。


「軽いし、動きやすい。

 ちゃんと戦隊ヒロイン用だ」


「成功ですね!」

玲が嬉しそうに言う。


「陽菜も着けてみ?」

唯奈が振り返る。


「えっ、私ですか~?」

陽菜はきょとん。


すみれコーチが慌てて止めた。


「陽菜が着けて怪我したら困るでしょ」


その瞬間。


「……オラなら怪我しても良いって言うんかぁ~」


唯奈の声が、低く響いた。


「いや、そういう意味じゃ……」

「オラは怪我係か?」

「頑丈そうだから……」


「健康優良児なだけだっぺよ!!」


空気が一瞬、凍る。


「……じゃあ」

美紀が静かに手を挙げた。


「私がやってみます」


「美紀、怪我しないでね」

すみれコーチが即答。


「……」


唯奈は無言。


「……オラの時、そんな心配なかったっぺよ?」


「唯奈は……」

すみれコーチは少し考えて、


「大丈夫かなって」


「雑!!!」


美紀が装着。


問題なし。


「これ、良いですね~」

「どの辺が?」

玲が即座に食いつく。


「姿勢保持が楽です。

 長時間着けても疲労が少なそう」


「なるほど……!」

「あと、看護学生目線だと――」


美紀の話を、

中村玲はメモを取りながら真剣に聞いていた。


その横で。


「……オラ、何だったんだっぺ」


唯奈は、天井を見上げた。


成功したのに、

 一番雑に扱われたのは唯奈だった。


――唯奈大迷惑シリーズ、

成功すればするほど、唯奈が割を食う法則は続く。

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