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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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431/453

唯奈大迷惑③ 「三号機、わりとマシ。でも最後は白煙」

試作品第2号の大爆死から一週間。

群馬県太田市、すみれコーチの実家町工場の奥では、懲りない大人たちが再び集まっていた。


「……理論上は、今回は行けます」


諏訪市のパートナー企業――正式名称は諏訪精巧機電研究所。

そこの若手女性技術者・中村玲は、真面目な顔で設計図を指していた。


「唯奈さんの意見、全部反映しました。重量配分、可動域、熱処理……」


「よし。今回は爆発しない」

すみれコーチは力強くうなずいた。


この時点で、誰も「爆発しない」という言葉を信用していなかった。


一方その頃、茨城県常陸太田市。

山奥の豪農・唯奈の実家では、野良着姿の唯奈がトラクターに乗っていた。


「いやぁ、今日も天気いがっぺなぁ」


畑を見渡しながら、のんびりと独り言を言った瞬間――


キキーッ!!


砂利を盛大に蹴散らし、一台の車が横付けされる。


「よっ!」

窓から顔を出したのは、すみれコーチだった。


「……あ?」

唯奈はトラクターを止めた。


「はい、拉致」

「は!? ちょ、今ジャガイモ――」


説明はない。

唯奈は野良着のまま助手席に押し込まれ、車は急発進した。


「またかよ! 今日は農協の集まりがぁ――」


山道を猛スピードで下り、北関東道を爆走。

二時間半後、群馬県太田市の町工場に到着した時、唯奈は完全に悟った。


「あー……これ、また変な装置だな?」


試作品第3号は、前回までよりも明らかに“普通”だった。

ゴテゴテした配線も減り、見た目はかなり洗練されている。


「今回は割とマシです」

中村玲が、少し誇らしげに言った。


「お、軽いな。前のは背負った瞬間に『死ぬ』って思ったっぺ」

「今回は非力な人でも使える想定です」


「ほぉ……じゃあ、陽菜でも行けっか?」

「理論上は」


またしても“理論上”という不穏な単語が出た。


唯奈は装置を装着され、スイッチを入れられる。


……ジジ……

……カシュ……


「お?」

唯奈は肩を回した。


「……あれ? 今回、普通じゃね?」

「でしょ?」

すみれコーチがドヤ顔をする。


動く。

走れる。

跳べる。


誰もが「成功」を確信しかけた、その瞬間――


……プスッ。


小さな音。


次の瞬間、

シューーーーーーーーッ!!


白い煙が、静かに、もくもくと立ち上った。


爆発はない。

音もない。

ただ、工場が一瞬で白くなった。


誰も動かない。


煙の中から、唯奈の声だけが聞こえた。


「……おーい……見えねぇ……」


やがて煙が晴れ、

そこには煤だらけで立ち尽くす唯奈がいた。


「……」

「……」


「……ダメだこりゃ」


普通ならここで終わる。

だが、唯奈は違った。


「でもよ」

煤を払いつつ、真顔で言う。


「前より全然いい。

 重さもマシだし、可動域も広い」


中村玲が身を乗り出す。


「具体的には?」


「背中の重心、あと3センチ下げた方がいい。

 それと、装着解除はもっと簡単にしねぇと、

 陽菜みたいな非力な子は詰む」


「……なるほど」


「あと熱。夏場はマジで死ぬ」


玲は必死にメモを取った。


「ユーザー目線……いえ、現場目線ですね」


「当たり前だっぺ。

 机の上で戦ってねぇからな」


すみれコーチは腕を組み、うなずいた。


「……やっぱり、唯奈は実験台として優秀だ」


「褒めてねぇだろそれ」


白煙の残る工場で、

ヘンテコ兵器開発は、今日も一歩だけ前に進んだ。


そして唯奈は、

また野良着のまま、何も聞かされずに車に乗せられた。


「次は第四号とか言わねぇだろうな?」

「さぁ?」

「ダメだこりゃ……」


――唯奈大迷惑シリーズ、まだまだ続く。

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