唯奈大迷惑② 畑から拉致され、また爆発
ヘンテコ兵器・試作品1号は、
理論的には完璧、現実的には完全崩壊という結果に終わった。
白煙の残り香が消えた太田市の町工場で、
諏訪市のパートナー企業の研究者たちは、揃って頭を抱えていた。
「エネルギー伝達が想定より……」
「制御系が現場耐性を……」
「いや、そもそも“あの人”に使わせたのが……」
その横で、すみれコーチは腕を組み、静かに頷く。
「設計、やり直そう」
研究者一同、無言で頷いた。
そして――二号機の開発が始まった。
一方その頃。
茨城県常陸太田市、さらにその奥。
山に囲まれた一帯に、やたらと広い畑が広がっている。
その中央で、野良着姿の唯奈が鍬を振るっていた。
「いや〜、今年ゃ土の具合いいっぺな〜」
その時。
キキィィッ!
砂利道に急ブレーキ音。
車が止まり、ドアが開く。
「唯奈」
すみれコーチだった。
「……は?」
唯奈は鍬を止める。
「ちょ、待てコーチ!
今なんでここいんだっぺ!?」
「改良できた」
「何がだっぺ!?」
すみれは唯奈の腕を掴む。
「行くよ」
「行くよじゃねぇっぺ!
私、今、畑の途中だっつーの!」
そのまま――
野良着・長靴・手袋装備のまま、唯奈は車に押し込まれた。
「これ完全に電波少年じゃねぇか!!」
車は山道を疾走する。
カーブも減速なし。
「コーチ!
ちょ、運転荒すぎだっぺ!」
「時間ない」
「あるっぺ!
命削ってるっぺ!」
北関東自動車道に入ってからもペースは落ちない。
「2時間半で着く」
「普通もっとかかるっぺ!?」
結果、
本当に2時間半で群馬県太田市に到着した。
唯奈はフラフラで降りる。
「……私、今、魂半分置いてきたっぺ」
町工場では、
研究者たちがやけに期待した目で待っていた。
「来ましたね、被験……」
「ユーザー代表です」
すみれが遮る。
唯奈は装置を見るなり言った。
「……前よりゴチャゴチャしてねぇな」
研究者が顔を上げる。
「分かりますか?」
「配線まとめたっぺ?
前は完全に“失敗する見た目”だったっぺ」
「……!」
装着。
起動。
ブゥゥン……
嫌な音はしない。
一同、固唾を呑む。
だが次の瞬間――
ボフッ!
軽い爆発。
煙。
「あわわわ!」
「圧力逃がしが!」
「すみません!」
唯奈は真っ黒になりながら、静かに言った。
「……ダメだこりゃ」
全員、うなだれる。
――が。
唯奈は続けた。
「でもよ、前より全然マシだっぺ」
「……え?」
研究者たちが顔を上げる。
「反応遅れなくなってるし、
重心も前より安定してる。
爆発も“逃げ”作ってあっから怪我しねぇ」
すみれが頷く。
「ユーザー目線」
唯奈は煤を払いながら言う。
「ウチの畑、ドローンで管理してんだっぺ。
機械ってのはな、“言うこと聞かねぇ前提”で作るもんだ」
研究者たちは、
真剣にメモを取り始めていた。
「……貴重な意見です」
「次は制御応答を……」
唯奈は苦笑いする。
「ま、次は爆発すんなよ?」
すみれが一言。
「……たぶん」
「その“たぶん”が一番信用ならねぇっぺ!」
工場には、
またしても明るく馬鹿馬鹿しい未来の予感が満ちていた。
(※被験者:山口唯奈
次回も、ほぼ確定)




