上尾発、輝けるふとん屋の娘 大宮麗奈
埼玉県上尾市。
駅前のアーケードの端っこに、古びた看板が一つ。
「大宮ふとん店」と墨書きされた木の看板は、かつての商店街の賑わいを今に伝えていた。
その娘こそ――大宮麗奈、24歳。
現役バリバリの人気イベントコンパニオンである。
モビリティショー、ビジネスショー、住宅フェア。
どの会場にも彼女の姿がある。
マイクを手にした瞬間、空気が変わる。
あの滑舌、あの笑顔、あの絶妙な間――ステージの中心に立つために生まれてきた女。
「皆さん、本日はご来場ありがとうございますっ!」
その声に観客の目が一斉に集まる。
完璧な立ち姿、どこまでも伸びる脚線美、そしてプロの余裕。
人気投票で毎回上位に入るのも当然のことだった。
だが、その「都会的で完璧」なオーラの裏には――ちょっとした“間抜け”が潜んでいる。
スマホの操作は壊滅的。
LINEのグループトークでスタンプを誤送信し、司令部の波田長官に「おやすみ♡」と送って青ざめたこともある。
メールの添付ファイルを開けずに「紙でくれません?」と言い放ち、広報官の遥を絶句させたこともある。
それでも、麗奈は憎めない。
プライドの高さの奥に、不器用な真面目さがある。
「イベントって、ほんとに生きてる感じがするの。お客さんが笑ってくれるだけで、報われるんです」
そう語る横顔は、照明に照らされた女神のように輝いていた。
彼女の実家、大宮ふとん店は、そんな華やかさとは正反対の場所だ。
ふとんの香りと蚊取り線香の煙、商売っ気ゼロの親父の「まぁ、寝てってくれや」という気の抜けた接客。
それが彼女の原点。
幼いころから、畳の上で育った娘が、今はステージの上で立つ。
マイクを握る手は、かつて反物の端をたたんでいた指先。
そのギャップこそが、大宮麗奈という人間の“味”なのだ。
MCのプロ、埼玉のオシャレ番長――
けれどその実態は、布団屋の娘で機械オンチの少しドジな女。
そんな彼女だからこそ、ステージに立つたび、観客は思う。
「やっぱりあの人、なんか放っとけないんだよな」
それが、大宮麗奈という“戦隊ヒロイン”の最大の魅力だった。




