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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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428/466

理論は完璧、現場は北関東 ――その日、唯奈は呼ばれた

北関東スリーアローズによる地域振興活動は、ようやく一区切りを迎えていた。

栃木・群馬・茨城を中心に、なぜか南東北まで含めて巡ったイベントツアーは、どこも盛況だった。


リーダーのすみれコーチが一時離脱していた期間は、いわき市出身のトロピカルダンサー、木戸瑠海――通称るみねぇ――が代行を務め、その采配も評判が良かった。


「るみねぇ、回しうめぇな」

「北関東向きだべ」


そんな声が各地で上がっていたが、すみれコーチ本人は気にしていなかった。

彼女は、ステージとは別の戦場に戻っていた。


群馬県太田市。

すみれコーチの実家である町工場の一角は、今日も金属音が響いている。


作業台の上には、南関東クラッシュギャルズ――麗奈、みのり、詩織――が訓練や実戦で見事に破壊した装備が山積みだった。


「……これは踏み抜いてる」

「これは投げた」

「これは……事故だな」


淡々と分析しながら、すみれは修理を進める。

壊れるのは想定内。

直すのが役目だ。


だが、修理だけではなかった。

工場の奥、カーテンで仕切られたスペースには、

まだ誰にも正式に披露されていない新兵器の試作品が鎮座していた。


その完成連絡が、長野県諏訪市のパートナー企業から届いたのは、つい先ほどだった。


「理論上は問題ありません」


理論上は、だ。


一方その頃。

茨城県常陸太田市の山奥。


「……は?」


唯奈は電話を耳に当てたまま、完全に固まっていた。


「群馬?

はぁ?

なんで急にそっち行く話になってんの?」


電話口のすみれは、いつも通り冷静だった。


「ちょっと見てほしいものがあるだけ」

「だけって言われてもよぉ……」


唯奈は眉をひそめる。


「私ゃ今日、畑の手伝いすっ予定だったんだど?」

「すぐ終わる」

「“すぐ”ってのが一番信用なんねぇんだっぺ!」


だが、すみれは聞き流す。


「昼には着けるでしょ」

「……あぁもう、分がんねぇ人だなぁ」


こうして唯奈は、理由もよく分からないまま、

山奥の自宅を後にすることになった。


バス、電車、さらに乗り継ぎ。

車窓の景色が、山から街へと変わっていく。


「なんだかなぁ……」

唯奈はぼそっと呟く。


「ろくな話じゃねぇ気がすんだよなぁ……

こういう時って大体、私が割食うんだっぺ」


その予感は、だいたい当たる。


太田市の町工場に着くと、

油の匂いと金属音、そして――


「来たね」


ヘルメットを脇に抱えたすみれコーチが立っていた。


「来たね、じゃねぇっぺ!」

唯奈は開口一番、声を張り上げる。


「何だっぺここ!

町工場じゃねぇか!

私、何しに呼ばれたんだっぺ!?」


「ちょっと試したいものがあって」


すみれの視線の先、

カーテンの隙間から、明らかに嫌な予感しかしない機材が覗いている。


唯奈は一歩後ずさる。


「……なぁコーチ」

「なに」

「私、これ、絶対関わんねぇ方がいいやつだっぺ?」


すみれは微笑んだ。


「理論上は安全」


「理論上な!?

現場は私だっぺ!?」


その瞬間、

唯奈の脳裏に、これまでの“嫌な予感的中率”が走馬灯のように蘇る。


それでも、

この時点ではまだ――


爆発も、煙も、悲鳴も、起きていなかった。


ただ、

工場には、

明るくて、確実にろくでもない何かが始まる予感だけが満ちていた。

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