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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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425/453

止まれと言う女、進めと言う女 ――令和ストップ・ゴー事件と、濃尾からやってきた切り札――

その任務に、銃声も爆発もなかった。


市街地で発生した大規模デモ。

一部が過激化し、一般市民の避難誘導とデモ隊の動線整理が急務となる。


「これは戦闘やありません。

事故を起こさへんための統制任務です」


若林あおいは、業務口調で淡々と言った。

航空自衛隊からの出向。

今回は空からの後方支援に加え、地上の全体管制も任されている。


一方、問題の交差点を押さえていたのは、兵庫県警から出向中の岡本玲奈だった。


「ここは完全封鎖や。

このライン、誰一人通したらあかん」


鋭い神戸弁。


そこへ、あおいの声が被さる。


「その判断は早計です。

市民の避難がまだ完了していません。

一時的に通路を確保してください」


「はぁ?」


玲奈が振り向く。


「今ここ開けたら、デモ隊が雪崩れ込むやろ。

止める言うたら止める。それが警察や」


「警察判断が常に最適とは限りません」


あおいは一歩も引かない。


「上空から確認しています。

今動かさなければ、裏通りで市民が孤立します」


「現場は現場で見とるんや!」


空気が張り詰める。

始まった――令和のストップ・ゴー事件。


「進め」


「止まれ」


正反対の指示が、無線と現場に同時に飛ぶ。


「ちょ、ちょっと待ってぇな!」


赤嶺美月が割って入る。


「止めたらええん? 進めたらええん?

どっちやねん、これ!」


「美月さん、少し落ち着きなはれ」


西園寺綾乃が、はんなりとした京都弁で制する。


「今は感情で動く場面やおへん。

一度、全体を見直さな……」


だが、その言葉も火に油だった。


「ほら見てみ。

上から来た人が現場混乱させとるやん」


玲奈が言えば、


「感情論での封鎖は、二次被害を招きます」


あおいが即座に返す。


「……これは、理屈と理屈が真正面からぶつかっとりますえ」


綾乃が小さくため息をつく。


「うちでも、これは止められしまへん」


「……もうアカンわ」


美月が頭を抱えた。


そのときだった。


「す、すみません……!」


場違いな、控えめな声。


振り向くと、カンガルーマークのトラックと、その前に立つ少女――伊吹真白。


「こちら……避難用の物資を積んでおりまして……

通行の件でお伺いしたいんですが……」


美濃弁混じりの丁寧な敬語。


「……は?」


一同が固まる。


真白は二人を見比べ、首をかしげる。


「止めるか、進めるかで揉めてはる……

という認識で、よろしゅうございますか?」


「……そうです」


あおいが答え、


「……せやけど」


玲奈も渋々うなずく。


真白はにこっと笑った。


「でしたら……

止める対象と、進める対象を分けていただけませんでしょうか」


沈黙。


「デモ隊の動線は止めていただいて……

市民避難用に、このトラックを起点に一本、流れを作っていただければ……」


「……合理的です」


あおいが即断する。


「……しゃあないな」


玲奈が息を吐く。


「今回は、そっちに乗ったる」


作戦は成功。

市民は混乱なく避難し、デモは沈静化した。


任務後。


「……さっきはな」


玲奈が、あおいに言う。


「現場の意地、張りすぎたわ」


「私も、地上の感情を軽視しました」


あおいは静かに一礼した。


「今後は、より密な連携を」


「……せやな」


二人が握手する。


少し離れた場所で、綾乃がぽつりと呟く。


「やっぱり、

止める勇気も、通す覚悟も……

どっちも要るもんどすなぁ」


真白はほっと息をついた。


「……良かったです」


「真白はん、あんた何者どす?」


綾乃が笑う。


「い、いえ……

ただのトラックドライバーです……」


「それが一番強いわ」


美月が肩を叩く。


真白は少し考えてから言った。


「止める判断も大事ですが……

無事に通す判断の方が、難しい時もありますので……」


その言葉に、

あおいはほんの一瞬、柔らかく微笑んだ。


空と地上。

警察と自衛隊。


そして、

濃尾からやって来た年少の運転手。


この日いちばん戦況を動かしたのは、

普通の仕事を、丁寧にやる人だった。

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