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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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422/453

弾は撃たない。命だけ拾う ――夜と嵐の中で、若林あおいは引き返さない

作戦は、完全に裏をかかれた。


夜間。

山岳地帯。

しかも、天候は最悪だった。


横殴りの雨。

低く垂れ込める雲。

視界はほぼゼロに近い。


「くそっ……位置、完全に割れとる……!」


前線にいたのは、突貫娘・山本あかり。

勢いで切り込んだはいいが、敵の奇襲を受け、右脚を負傷。

撤退ルートは塞がれ、身動きが取れなくなっていた。


「動けへん……ごめん、みのりさん……」


「謝らないで。今は、生きることだけ考えて」


館山みのりは、冷静だった。

だが内心では、時間が残されていないことを理解していた。


通信が入る。


『こちら若林。現在位置、把握しました』


その声は、不思議なほど落ち着いていた。


「……来る気か?」


みのりが問いかける。


『行きます』


短い即答。


『夜間、悪天候、視界不良。

 条件は最悪ですが、可能です』


「正気ですか!?」


前線から、思わず声が上がる。


『正気だから行きます』


上空では、航空自衛隊から出向中の若林あおいが、操縦席に座っていた。

ヘリコプターはすでに現場上空に向かっている。


高度を下げるたび、機体は乱気流に煽られる。

雨粒がフロントガラスを叩きつけ、計器類の光だけが頼りだった。


副操縦士が息を飲む。


「……この条件でホバリング救出は……」


「できます」


あおいは、淡々と答えた。


「弾は撃ちません。

 今日は、命を拾うだけです」


現場上空。


照明弾も使えない。

敵に位置を悟られれば終わりだ。


あおいは、音を殺すように高度を調整し、わずかな地形の凹凸を利用してホバリングを開始した。


「……今です」


ロープが下ろされる。


みのりは、負傷したあかりを背負った。


「行くよ、あかり」


「……はい……!」


ロープに手をかけた瞬間、強風が二人を揺さぶる。


「くっ……!」


『風、来ます。三、二、一……今』


あおいの声と同時に、突風が抜けた。

その一瞬を逃さず、みのりは身体を引き寄せる。


二人は、無事に機内へ。


「回収完了!」


次の瞬間、ヘリは一気に高度を上げた。


敵の攻撃は、間に合わなかった。


撤退成功。


機内には、雨音とエンジン音だけが残る。


あかりはストレッチャーに固定され、荒い息をついていた。


「……助かりました……」


みのりは、深く頭を下げた。


「若林さん。

 あなたがいなければ、あかりは……」


あおいは、操縦桿から目を離さず、静かに答えた。


「前線で戦う人がいるから、私は空にいます」


「でも……」


「それで十分です」


基地に戻る途中、雲の切れ間から月が顔を出した。


その淡い光が、操縦席のあおいを照らす。


誰よりも危険な役割を担い、

誰よりも静かに、

誰よりも確実に命を持ち帰る。


それが、彼女の戦い方だった。


後日。


回復したあかりが、照れくさそうに言った。


「……若林さん、ヒーローですね」


あおいは、わずかに首を振った。


「私は、弾を撃っていません」


みのりが微笑む。


「でも、命を救いました」


その言葉に、あおいはほんの一瞬だけ、目を伏せた。


そして、こう言った。


「それが、一番の勝利です」


――特攻野郎のように派手ではない。

――だが、誰よりも勇敢。


夜と嵐の中で、

弾を撃たず、命だけを拾った女がいた。

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