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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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420/453

空では完璧、地上で迷子――令和版ストップ&ゴー事件、勃発

若林あおいは、今日も困っていた。

理由は明確だ。自分が“戦隊ヒロイン”として正解なのか分からない。


ヘリコプターの操縦席に座れば、迷いは一切ない。

天候、風向、機体の癖――すべてが数字と感覚で理解できる。

空では、彼女はエリートだった。


しかし、地上。

それもイベントステージ。


「では次、可愛くポーズお願いします!」

スタッフの声が、敵のレーダー警報より厄介に聞こえる。


あおいは内心で叫ぶ。

“可愛く、とは何だ。定義を示してくれ。”


何より彼女を困らせているのが、戦隊ヒロインの制服だった。

機能性? ほぼゼロ。

露出? 無駄に多い。

キュート? それが問題だ。


鏡の前で、あおいは深いため息をつく。

「……飛行服の方が、100倍落ち着く」


凜としてカッコいい、という評価はありがたい。

だが、フリフリ要素が混ざると、思考が停止する。

自分は戦う側であって、愛でられる側ではない――

その認識が、どうしても拭えなかった。


そんなあおいが、さらに頭を抱える相手がいた。

警察から出向している戦隊ヒロイン、玲奈である。


イベントの立ち位置決め。

これが、毎回荒れる。


「若林さん、次の曲、私が前で止めますね」

玲奈が言う。


「了解。では私は後方で待機します」

あおいが即答する。


「いや、“止める”って、前に立つって意味で……」

「止めるとは、動きを制止することでは?」

「違います」


――こうして始まる。


玲奈は警察仕込みで、“止まれ”の人。

あおいは空自仕込みで、“進め”の人。


結果、ステージ上で

前に出る人と、下がる人が同時に発生する。


客席から見ると、

誰も前に出てこない。


スタッフが頭を抱える中、

二人は真剣そのものだった。


「今、止めました」

「いえ、進行すべきでした」

「止めるべきです」

「進めるべきです」


周囲がボソッと言う。

「……これ、令和のストップゴー事件じゃん」


ここで、歴史が一瞬、顔を出す。

昭和初期、日本では軍部と警察が交通整理で対立し、

軍が「進め」、警察が「止まれ」と指示を出し、

市街地が大混乱に陥ったことがあった。

これが有名なストップゴー事件である。


そして今。

舞台は戦隊ヒロインのイベントステージ。

軍部ポジション=空自のあおい。

警察ポジション=玲奈。


再現度が高すぎる。


「歴史、繰り返すんだね……」

誰かがつぶやいた。


あおい本人は、もちろん歴史オマージュなど意識していない。

ただ、任務として正しい行動を取っているだけだ。


「玲奈さん、衝突の可能性があります」

「若林さん、観客の安全を優先してください」


二人とも、正しい。

正しいが、イベントとしては致命的に噛み合っていない。


結局、遥室長が割って入る。

「はいはい、ストップゴーは会議室まで!

 ステージでは“にっこり前進”でいきましょう~」


その一言で、全員が脱力した。


あおいは控室で、そっと息を吐く。

「……地上任務、難易度が高い」


だが、少しずつ変化は起きていた。

他のヒロインたちは、そんな不器用さを面白がり、

「若林さん、真面目すぎて逆に可愛い」と言い始める。


本人は理解できない。

だが、悪意ではないことは分かる。


空では完璧。

地上では迷子。

それでも、彼女は今日も制服に袖を通す。


「これは……任務だ」


そう呟きながら、

あおいは再びステージへ向かう。


令和のストップ&ゴー事件は、

今日も静かに、そして賑やかに続いていくのだった。

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