房総暴走モード、発動
南房総の山肌に、重機のエンジン音と爆風が響く。
ジェネラスリンクの残党が採石場を拠点に立てこもり、戦隊ヒロインたちは殲滅作戦を展開していた。
「敵影、前方五十メートル! 重機の陰に三体です!」
冷静に指示を出す館山みのり。
文学少女のような柔らかな声に、仲間たちは安心する。
そのとき――敵のスピーカーから、致命的な一言が響いた。
「千葉? 東京のオマケだろ? なーにが房総の叡智だ、田舎もんめ!」
みのりの動きが止まった。
風も止んだ。
誰もが悟った――“それを言ってはいけない”と。
「……今、なんとおっしゃいました?」
声は静か、だが凍りつくほど冷たい。
次の瞬間、みのりの体がしなやかに弾けた。
少林寺拳法の構え――からの掌底。
打撃音とともに敵が宙を舞い、爆発が連鎖する。
蹴り一つで戦車が横転し、拳の風圧で岩壁が崩れ落ちた。
「千葉を侮辱するとは、許せません!」
怒りの咆哮が採石場に響き渡る。
ブルドーザー、油圧ショベル、発電機――片っ端から粉砕。
ジェネラスリンクの戦闘員たちは全滅、採石場はまるで戦後のクレーター。
煙が立ち込める中、みのりはようやく我に返った。
「……あ、あれ? やりすぎました……?」
無線から波田司令長官の声が響く。
「おまいさん、また派手にやりやがったな。こりゃ採石場が埋蔵文化財みてぇになっちまったぞ」
そこへ入るのは、静かな駿河弁の声――広報官・芹沢遥だ。
「……はいはい、もうええですよ司令長官。あとはうちがなんとかしますで」
「現場の後始末も慣れたもんです。損保の担当さん、もう顔覚えちゃいましたよ」
みのりが縮こまりながら答える。
「……本当にすみません。千葉を悪く言われると、どうも理性が……」
遥は穏やかに笑う。
「そりゃあ怒って当然ですよ。千葉をバカにするなんて、よう言えたもんです。
でもね、次はもう少し“部分的な暴走”にしてもらえます? 全壊だと予算が持ちませんで」
波田が口を挟む。
「おまいさん、広報のクセに会計の話まで詳しくなったな」
戦場の跡で苦笑いする二人。
その背後で、崩れた岩の間から風が吹き抜け、海の匂いが漂った。
遥がふっと空を見上げて言う。
「ま、これでまた一歩、千葉の平和が守られましたねぇ」
みのりは小さく頭を下げた。
「はい。……でも次はもう少し静かに、やります」
「そうそう、それがいっちゃんええですよ。静岡の人間もそうですで、静かにやるが一番です。
ほでもな、ほんまに困ったらまた暴れてええですよ――
うちがなんとかしますで、心配せんといてくださいね」
――南房総に再び静寂が戻る。
煙の向こうに立つ二人の姿は、まるで春風のように柔らかく、
そして確かに“千葉と静岡の絆”を感じさせた。




