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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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415/455

キャッチコピーは増えるよ、本人知らぬ間に ――野村ラッパ無限増殖編――

ゆりえの人気は、

 静かに、しかし確実に広がっていた。


 テレビで大騒ぎになるわけでもなく、

 ネットで炎上するわけでもない。

 だが、イベントに来た人間が口を揃えて言う。


 「なんか、あの子……忘れられないよね」


 それを聞いて、

 一番気持ちよくなっていた男がいる。


 野村である。

 ラッパ付きである。


 「来とる……来とるで……

 地鳴りみたいに来とる!!」


 この日も、イベント会場入りの控室で、

 野村は一人でテンションが限界突破していた。


 「ええか、今日のゆりえはな、

 ただの新人ちゃう。

 富山湾の深層から現れた沈黙の破壊者や!!」


 スタッフがメモを取る手を止める。


 「……また始まった」

 「今日、何個目?」

 「まだ朝です」


 野村は止まらない。


 「いや違うな、今日はこれや!

 “静かなる爆乳革命”!!」


 「却下」

 「即却下」

 「長い」


 その横で、

 当の本人・ゆりえは、

 紙コップのお茶を両手で持ったまま固まっていた。


 「……あの……

 私、革命とか……」


 「気にせんでええ!!

 これはワシの仕事や!!」


 仕事の方向性が間違っている。


 やがて、

 イベント開始30分前。


 MC小春が、

 台本を片手に現れた。


 「おはようございまーす……

 えーっと、今日の紹介文……」


 そこへ、

 満を持して野村が近づく。


 「小春ちゃん!!

 今日も頼むでぇ!!」


 「……嫌な予感しかしないんですけど」


 野村は、

 ポケットからメモ用紙を何枚も取り出した。


 「今日のゆりえのキャッチコピー、

 最新版や!!」


 小春、絶句。


 「……え、昨日も決めましたよね?」

 「昨日は昨日!!

 今日は今日の空気がある!!」


 小春が一枚目を読む。


 「えー……

 『越中富山が産んだ、静寂のダイナマイト』……」


 「どうや!!」


 「……爆発してるか静かか、どっちかにしてください」


 二枚目。


 「『声を出さずに会場を制圧する女』……」


 「それ、ちょっと物騒じゃないですか?」


 三枚目。


 「『高岡の奇跡・第二形態』……」


 「第一形態いつ出たんですか」


 四枚目。


 「『雪国が隠していた最終兵器』……」


 「隠す意図どこですか」


 五枚目。


 「『見た目は素朴、中身は大惨事』……」


 「それ悪口です!!」


 小春は頭を抱えた。


 「ノムさん……

 どれ使えばいいんですか」


 野村は胸を張る。


 「全部や!!」


 「無理です!!」


 そのやり取りを、

 ゆりえは遠くで聞いていた。


(……私、

 どれ……?)


 革命なのか、

 最終兵器なのか、

 静寂なのか、

 大惨事なのか。


 自分が何者なのか、

 完全に見失っていた。


 「……あの……

 私は……氷見ゆりえです……」


 誰にも聞かれていない自己紹介が、

 控室の隅に消えた。


 そして、

 イベント本番。


 ステージに立った小春は、

 一瞬だけ空を仰ぎ、覚悟を決めた。


 「それでは……

 本日ご紹介するのは……」


 一拍。


 「キャッチコピーが定まらない女!!」


 会場、爆笑。


 野村、ガッツポーズ。


 「越中富山が産んだ、

 静かなる存在感!!

 高岡の奇跡とも、

 富山湾の最終兵器とも、

 最近は呼ばれております!!」


 ゆりえ、目を見開く。


 (最近……?)


 「本人はどれも自覚ありません!!」


 再び爆笑。


 小春は続けた。


 「ですが一つだけ確かなのは——

 今日もここに立っているということ!!」


 ゆりえは、

 その言葉で、少し救われた。


 ステージ袖で、

 野村が満足そうに呟く。


 「な?

 キャッチコピーなんてな、

 後から追いつくもんや」


 スタッフがボソッと返す。


 「追いついてるのは、

 ノムさんの暴走だけですけどね」


 だが、

 ゆりえは思った。


(……増えてもいいかも)


 自分がまだ定まらないなら、

 周りが騒ぐのも悪くない。


 その夜、

 新たなメモが追加された。


 『キャッチコピー未確定型ヒロイン』


 野村ラッパは、

 今日も元気に吹き荒れていた。

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