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赤嶺家の賑やかな食卓


「ほらほら、冷める前に食べるで! 今日はおばあちゃん特製の肉じゃがやで〜!」


母・春菜の声が、台所からリビングへ響きわたる。


赤嶺家の夜は、だいたいこの声から始まる。

この日は特ににぎやかだった。近所に住む祖父・清一と祖母・花が差し入れを持ってやってきたのに加え、美月の戦隊ヒロインとしての相棒、西園寺綾乃までが「ご無沙汰しております」と深々と頭を下げながら加わっていた。


「わぁ、おばあちゃんの肉じゃが、ひさしぶりや〜!」


美月はちゃぶ台を囲みながら歓声を上げると、いの一番に箸を伸ばす。


「おい美月、まず“いただきます”言わんかいな」と父・真人が苦笑しながらツッコみ、


「そやそや、ヒロインがそれでええんか?」と祖父・清一が腕組みで威圧をかける。


「そ、そんな圧で肉じゃが食う家あるぅ〜!?」と笑いながら、美月は慌てて手を合わせた。


綾乃はというと、隣で控えめに小鉢のひじきをつつきながら、「ほんまに、にぎやかどすなあ……」と微笑をこぼす。


「綾乃ちゃん、うちの子が普段どんなんかバラしてもええんよ? どうせヒロインの裏話とかいっぱいあるやろ?」


と母・春菜がふっかければ、


「おかあさん! それは企業秘密やで!? 国家機密レベルやから!」


「国家機密言うてるくせに、あんた昨日のニュースの交通安全キャンペーンで『止まれやコラァ!』って河内弁で言うとったやろ!」


「ヒロイン活動やもん、ナチュラルに魂入ってまうんや……!」


場がドッと笑いに包まれる。


祖母・花は、そんなやり取りを穏やかに見守りながら、にこにこと肉じゃがを小鉢によそい直していた。


「でも綾乃ちゃん、あんたも大変やなぁ。うちの美月と組んで、よう怒らんとおれるな」


「いえ、美月さんの真っ直ぐさには、助けられてばかりどす。時折、戦場で『ワレ、なめとんのかコラァ!』って叫ばれたときは、さすがに敵よりこっちがビクッとしましたけど」


「やっぱりか!!」全員が総ツッコミ。


笑い声と食器の音が重なって、ちゃぶ台の上には家庭のぬくもりと戦場の回想と、そしてなによりヒロインたちの“日常”が湯気のように立ち上っていた。


「なぁ、おじいちゃん、次の作戦で敵のアジトに潜入するとき、ウチ、仁義なき戦いのセリフ使おうと思うねん」


「やめとけ、国際問題になるわ」と祖父が即答した。


こうして、赤嶺家の夜は今日も笑いとツッコミに包まれて更けていく。

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