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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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393/458

ゆず姉になりたいと言った日、世界は土佐弁で解決した ――コピー禁止令と、擬音の正解――

小野寺彩音は、ずっと思っていた。


(ゆず姉みたいになりたい)


 阿部柚葉。

 規格外の秋田美人。

 無言でも空気を支配できて、

 立っているだけで現場の温度を変えるヒロイン。


 彩音にとって、

 それはもう“完成形”だった。


 ある日の夜。

 柚葉の部屋。


「……ゆず姉」


「なに?」


 彩音は少し間を置いて、意を決して言った。


「私、

 ゆず姉みたいな戦隊ヒロインになりたい」


 その瞬間。


「それは、やめた方がいい」


 即答だった。


「……え?」


 彩音は固まった。


「え、えっと……

 嫌、とかじゃなくて……」


「嫌じゃない」


「じゃあ……」


「でも、ダメ」


 柚葉はソファに腰掛け、淡々と言った。


「私は私」


「……」


「彩音は彩音」


「……」


「コピーは、

 いらない」


 彩音の胸が、ちくっとした。


「私……

 憧れちゃダメなんですか?」


「憧れるのはいい」


「じゃあ……」


「“なろう”とするのがダメ」


 柚葉は静かに続ける。


「彩音が

 “阿部柚葉二号”になったら」


「……」


「それは、

 彩音が消える」


 彩音は言葉を失った。


 その夜、彩音は眠れなかった。


(じゃあ……

 私は、何を目指せばいいの?)


 真面目で、活発で、一直線。

 でも、“自分らしいヒロイン”って何だ。


 翌日から、彩音は聞いて回ることにした。


 まずは澪。


「澪さん、

 自分らしいヒロインって何だと思いますか?」


「えー……」


 澪は少し考えてから、


「無理しないこと、かな?」


「……それだけ?」


「うん。

 無理しないの、大事」


 ──終了。


(毒にも薬にもならない……)


 次は沙羅。


「沙羅さんは、

 どうやって自分を確立したんですか?」


「簡単よ」


 沙羅は自信満々に言った。


「私は元々完成されてるから」


「……」


「努力してないわけじゃないけど?」


「……」


「努力する私が素晴らしいのよ」


 ──参考にならない。


(自己評価だけ高い……)


 次は理世。


「理世さん、

 “自分なりのヒロイン像”って……」


「まず前提条件として、

 ヒロインという存在を役割論的に──」


 十分後。


「──つまり多層構造的な自己定義が──」


 十五分後。


「──だから彩音さんの場合、

 変数を整理すると──」


 彩音の脳内は完全にフリーズしていた。


(……むずかしい)


 次は詩織と陽菜。


「彩音ちゃんはさぁ」


 詩織がにこにこしながら言う。


「元気だから、

 元気でいいと思う!」


「そうそう!」


 陽菜も頷く。


「いっぱい動いて、

 いっぱい声出せばいいよ!」


「……それだけ?」


「うん!」


「わかりやすい……けど……」


 少し幼稚。

 でも、なんとなく頭には残る。


 最後に、

 彩音は“あの人”のところへ行った。


「なつめさん……」


「お、彩音じゃき」


「自分らしいヒロインって、

 どうすればいいんですか?」


 なつめは一瞬考えて、


「うーん……」


 そして、

 いきなり立ち上がった。


「まず、バッと行く」


「え?」


「ほんで、サッと引く」


「え?」


「それで、

 ドンじゃき」


「……?」


 なつめは、身振り手振りで続ける。


「柚葉はな、

 “黙ってドン”」


「はい……」


「彩音は、

 “走ってドン”」


「……!」


「同じドンでも、

 やり方が違うき」


 彩音の中で、

 何かがストンと落ちた。


「……私、

 動いてる方が自然かも」


「そうじゃき」


「考えるより、

 先に動く」


「それが彩音」


 なつめは笑った。


「無理に静かにならんでええ」


「……!」


「走って、転んで、

 立ち上がるヒロインでええ」


 彩音の目が、きらっと光った。


 その夜。


「……ゆず姉」


「なに?」


「私、

 ゆず姉みたいにはならない」


「……」


「でも、

 ゆず姉がいるから、

 自分になれる」


 柚葉は、少しだけ目を細めた。


「それなら、いい」


「私、

 “動くヒロイン”になる」


「それが彩音」


 彩音は笑った。


 こうして彩音は、

 “憧れ”を“目標”から外すことに成功した。


 ……とはいえ。


 翌日。


「彩音ちゃん、

 頑張ってるねぇ!」


 波田顧問の一言で、

 また全力疾走するのは、

 言うまでもない。

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