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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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380/458

カフェに現れた瞬間、月島小春が敗北した日 ― 秋田美人ヒロイン阿部柚葉、静かに参戦

 その相談は、あまりにも軽かった。

「なぁ小春、戦隊ヒロインにちょっと興味ある子がおるんやけどさ」

 大学時代の男友達からの連絡は、いつも通りの気楽な口調だった。


「へぇ。で?」

「一回、話聞いてもらえん?」


 小春は一瞬だけ考え、「じゃあ、顔合わせだけな」と答えた。

 軽い気持ちだった。正直に言えば、“また変なの連れてくるんやろな”くらいに思っていた。


 数日後、都内の静かなカフェ。

 先に着いていた小春がアイスコーヒーを一口飲んだ、その時だった。


 ドアが開く。

 光が差し込む。

 ――そして、入ってきた女性を見た瞬間、小春は心の中で即座に白旗を上げた。


「……うわ。負けた」


 手足がすらりと長く、白い肌は照明を反射しているかのよう。

 整いすぎていないのに、整っている顔立ち。

 余計な装飾のない服装なのに、妙に目を引く存在感。


「初めまして。阿部柚葉です。今日はありがとうございます」


 声まで落ち着いている。

 小春は心の中で即座に自己分析を始めた。

(あかん、これ“秋田美人”の教科書や)


 男友達が席に着くと、三人で簡単な自己紹介が始まった。

 話してみて、小春はさらに追い詰められる。


 名門私大に在学中。

 受け答えは理知的で、言葉を選びながら話す癖がある。

 戦隊ヒロインについても「派手さより、役割と責任が大事だと思っています」と淡々と言う。


(なにこの完成度……)


 気づけば小春は、完全にスカウト側の目線になっていた。

 カフェを出る頃には決めていた。

 この子は、ヒロ室に出す。絶対に。


 数日後、面談。

 同席した小宮山琴音は、開始五分で頷き始め、十分後には腕を組み、終了後に一言。


「もう完璧。10点満点中、100点ずら」


 甲州弁での即断即決だった。

 遥室長も静かに笑って頷き、合格はあっさり決まった。


 後日、小春のもとに例の“粗品”が届く。

 箱を開けて中身を確認し、ひとこと。


「……ショボっ」


 それを横から覗き込んだ美月がすかさず聞く。

「なぁ、こはるん。粗品って何やったん?」


 小春はにっこり笑って答えた。

「国家機密ですよ~♪」

 そして追撃。

「美月パイセンもお友達紹介すればいいじゃないですか? 交友関係広いんですし」


「ぐっ……」

 美月は腕を組み、天井を見上げる。

「そりゃそやけど……あっ」


 何かを思い出した顔で、にやりと笑う。

「……ええの、おったわ」


 その言葉に、周囲のヒロインたちが一斉にざわついた。

 小春はコーヒーを飲み干しながら、静かに思う。


(また厄介なのが来そうやな……)


 こうして、

 静かで、強くて、完成度の高い秋田美人ヒロイン・阿部柚葉は、

 何の騒ぎもなく、しかし確実に、戦隊ヒロインの世界へ足を踏み入れたのだった。


――そして、美月の“思い出した誰か”が、

 次の波乱を連れてくることを、まだ誰も知らない。

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