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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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38/444

事なかれ司令官・葛城正男 〜ご安全に、今日も空気です〜

内閣府・戦隊ヒロイン推進室。

霞が関の一角に、誰も使わないのに毎日きっちり掃除だけはされている会議室がある。

その主こそ――葛城正男、45歳。

大阪・吹田出身の北摂なまり官僚、通称“事なかれ司令官”である。


「えーまぁ、そのぉ……皆さん、今後の活動についてやけどもなぁ……」


――始まった。

午前10時の会議。

話の内容が五分で済むのに、終わるのは昼休み。

この人が一番得意なのは「何も決めない会議を仕切る」ことだった。


河内のリーダー美月が呆れ顔でつぶやく。

「なぁ、結局なんの話なん? 結論どこいったん?」


綾乃がはんなり笑って刺すように言う。

「ええ時計してはりますなぁ、時間だけはよう進んではるけど」


彩香が眉をしかめて机をコツコツ叩く。

「結論は? まとめは? 報告書は? ほら言うてみぃや!」


遥広報官は、笑顔の裏で心拍数を測りながら記録を取り続ける。

(……今日も“何も決まらんデー”やな)


葛城は動じない。

むしろ満足げに頷く。

「うん、ええ意見出ましたなぁ。これで次回、検討課題いうことでええやろ」


つまり、“結論を次回に送る”のが彼の必殺技だった。

上にはペコペコ、下には理屈を並べて煙に巻く。

彼の辞書に“判断”と“責任”の文字はない。


一応、高級官僚。だが実態は雑用係。

書類のホチキス留めと、会議のお茶出しのタイミングだけは完璧だ。


「司令官て名前だけやな」

と美月がぼそり。

「空気やけど、空気清浄機にもならへんな」

と綾乃が追い打ち。

彩香は鼻で笑う。「姫路のうちの工場長でも、もうちょいマシやわ」


――それでも葛城はめげない。

机を叩いて笑いながら、「ま、まぁまぁまぁ」となだめ、

話をさらに三倍に延ばす。


家庭では妻と高校生の娘、そして中学生の息子がいる。

序列はペットの熱帯魚以下。

娘には“パパ”と呼ばれず、息子には“課長”と呼ばれ、

夕飯の味噌汁にはいつもワカメだけ。


それでも彼は言う。

「ま、何も起きんかったら、それが一番や」


そう、“事なかれ主義”こそ葛城正男の生き様。


今日も彼は、誰からも求められていない報告書を3部コピーし、ホチキスで丁寧に留めている。


美月「なぁ綾乃、これ読んだ?」

綾乃「読まへんけど、きっと“検討を要する”って書いてあるわ」

彩香「やっぱりな」


そして会議室のドアの前で遥がそっとため息をついた。

「……ほんま、ご安全にやな」


――戦隊ヒロインプロジェクト、今日も平和。

なぜなら葛城司令官が、何も決めないから。

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