表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

378/459

笑顔で敵が消える三好さつき

富士川の研修センターが、やけに静かだった。

 静かすぎて、逆に不穏である。


「次は、三好さつきさん。模擬戦、お願いします」


 呼ばれたさつきは、背筋をすっと伸ばし、にこやかに一礼した。

 透明感のある笑顔。

 長身。

 清楚。

 いかにも「戦闘は苦手そう」な雰囲気。


 観覧席のヒロインたちがヒソヒソする。


「さつきちゃんって、完全に清楚枠やんな」

「戦闘は見学タイプちゃう?」

「鳴門の渦とか言うてるけど、実物はふわっとしてるし」


 ――その油断が、すべてだった。


 開始の合図が鳴った瞬間、

 さつきの足が、すっと床を滑った。


「……あれ?」


 最初に違和感を覚えたのは、理論派の理世だった。

 次の瞬間、さつきの身体がくるりと回る。


 阿波踊りのステップ。

 軽い。

 速い。

 無駄がない。


 敵役の訓練員が間合いを詰めた――と思った瞬間、

 視界から、さつきが消えた。


「え?」


 次に見えたのは、

 背後に回り込んださつきが、

 静かに、優雅に、相手を床に寝かせている姿だった。


 音がしない。

 叫びもない。

 ただ、倒れている。


「……終わりました」


 さつきが、涼しい顔で言う。


 会場、沈黙。


 なつめが一拍遅れて叫んだ。

「ちょ、ちょっと待つき! 今の、何したが!?」


「普通に動いただけです」

「普通じゃないき!」


 再開。

 今度は二人がかり。


 だが、さつきは焦らない。

 鳴門の渦のように、円を描くように動く。

 長身なのに、重さがない。

 敵の力を“受け流す”どころか、“使って”いる。


 ドサ。

 ドサ。


 気づけば、床に転がる敵役が増えていた。


 美月がぽつり。

「……なぁ、あの子、笑顔のまま倒してへん?」


 綾乃がはんなりと頷く。

「ええ動きどすなぁ。美しいけど……ちょっと怖いえ」


 最後の一人が突っ込んだ瞬間、

 さつきは一歩、半歩、くるり。


 ――渦。


 相手は、なぜ倒れたのか分からないまま、マットに沈んだ。


 終了。


 拍手が、遅れて起きた。


 隼人補佐官が、ゆっくりと腕を組む。

「……これは」


 少し間を置いて、静かに言った。


「一番“静かに怖い”タイプですね」


 ざわっ。


 なつめが口をぽかんと開ける。

「清楚枠やなかったが?」


「清楚です」

「清楚で、これかえ!?」


 さつきは首を傾げる。

「踊りの応用です。阿波踊りって、重心移動が大事なんです」


 説明が、いちいち上品。


 理世が理知的に敗北宣言する。

「……合理的です。非常に」


 その後。

 ヒロ室のホワイトボードには、新しいメモが追加された。


【三好さつき:清楚枠/実戦危険度S】


 誰かが書き足す。


【注意:笑顔のまま敵が消える】


 さつき本人は、それを見て首を傾げた。

「そんなに物騒でしょうか?」


 なつめが肩を叩く。

「さつき、あんた一番エグいき」


 こうして、

 清楚枠として加入したはずの三好さつきは、

 戦隊ヒロイン内で

 **“一番静かで、一番怖い存在”**として認識されることになった。


 ――笑顔は、最後まで崩れなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ