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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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377/470

清楚一人で四国が揺れる――勝手に始まる代理戦争

三好さつきが戦隊ヒロインとして本格的にイベントに出始めてから、空気が変わった。

 変わったのは会場だけではない。四国全体である。


 透明感。清楚。長身。

 しゃべれば知的、笑えば上品。

 しかも、たまに阿波弁が漏れる。


 ――強い。

 とにかく、絵面が強い。


 西日本を中心に人気はじわじわ、しかし確実に上昇した。

 ファンは言う。


「なんか…品が違う」

「育ちの良さが滲んでる」

「空気が澄む」


 これを聞いて、最初にガッツポーズをしたのは徳島県当局だった。


「よし」

「来た」

「やっと来た」


 別に、何もしていない。

 推薦もしていない。

 書類も出していない。


 だが、鳴門市出身というだけで、なぜか胸を張る。


「徳島からも戦隊ヒロインが出た」

「やはり人材の宝庫」

「教育水準の高さが――」


 と、県庁の会議室では誰も頼んでいない総括が始まっていた。


 一方、高知県当局。


 こちらはすでに神代なつめという“土佐の突進娘”を全面推ししている。

 四国初。

 土佐弁全開。

 勢いだけで山を動かす女。


 そこに現れた、清楚な徳島ヒロイン。


「……四国唯一、じゃなくなったな」


 誰かが言う。


「まあ、タイプが違うき」

「向こうは清楚、こっちは突進」

「棲み分けじゃき」


 と口では言うものの、

 会議資料にはなぜか赤字でこう書かれていた。


【※“四国唯一”表記、要再検討】


 少しだけ、気になっている。


 次に動いたのは、香川県だった。


「様子見で」


 以上。

 香川はいつだって冷静だ。

 うどんを打ちながら、じっと見ている。


 しかし――

 愛媛県が、ざわついた。


「徳島に清楚が出た」

「高知には突進がいる」

「香川は様子見」


 ――ならば。


「愛媛からも、“清楚枠”を」


 どこからともなく、そんな声が上がる。


「いや、清楚ならうちの方が」

「品格なら愛媛」

「みかんの育ちが違う」


 理由が全部ふわっとしている。


 こうして、

 四国四県、誰も頼んでいない対抗意識が芽吹き始めた。


 当の本人、三好さつきはというと。


「四国、みんな仲良しでいいですね」


 と、にこやかに言うだけ。


 なつめが横で叫ぶ。

「さつき、気づいとるか? 今、四国がざわざわしゆうき!」


「そうなんですか?」

「さっぱりわかりません」


 そこがまた、火に油だった。


 ヒロ室では、安岡真帆が資料を見てため息をつく。


「……四国、勝手にバトルロワイアル始めてるわね」


 遥室長は穏やかに笑う。

「地域が盛り上がるのは、悪いことではありません」


 ただし――

 誰も指示していない。


 こうして、

 清楚ヒロイン一人の登場をきっかけに、

 四国はそれぞれのプライドを胸に、

 静かに、しかし確実に、火花を散らし始めた。


 ――次に名乗りを上げる県は、どこだ。

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