四国包囲網、突破される。――透明すぎる徳島枠、爆誕
高知県が一つのヒロインを生んだだけで、四国全土がここまで揺れるとは、誰が想像しただろうか。
原因はただ一人。
土佐の突進娘・神代なつめである。
地元高知での扱いは、もはや「戦隊ヒロイン」というより県の文化財候補。
テレビは連日特集、新聞は一面、町内会は横断幕。
その熱気が四国山脈を越えた瞬間――隣県・徳島県が黙っていなかった。
「なぜ高知だけが」「徳島からも出すべきでは」「四国は一枚岩ではなかったのか」
県庁はざわつき、地元メディアは苛立ち、代議士は腕を組んだ。
そして最終的に矛先が向いたのが――ヒロ室である。
「徳島枠を至急用意せよ」
圧は、静かだが確実だった。
ヒロ室では、当局推薦の“徳島代表候補”たちとの面談が続いた。
悪くはない。
真面目だし、感じも良い。
だがどこか決定打に欠ける。
まさに帯に短し襷に長し。
まさにゃん室長代理が腕を組み、
「うーん……惜しいけど、決め手がなぁ」
と唸るたび、徳島県関係者の肩が落ちる。
そんな中、遥室長がふと、いつもの穏やかな駿河弁で口を開いた。
「彩香さんの大学、関西の名門でしょう。徳島出身の可愛い子、いません?」
その瞬間、
播州弁がトレードマークの西川彩香が、珍しく歯切れを失った。
「……居ますけど」
「けど?」
「本人が、その気になるかどうかでして」
この歯切れの悪さが、すべてを物語っていた。
数日後。
ヒロ室の会議室に現れた女性を見た瞬間、空気が変わった。
透明感。
清楚。
長身。
姿勢が良く、声が落ち着いている。
三好さつき。
名乗りを聞く前に、まさにゃんは心の中でこう呟いた。
(……あ、これ採用や)
事実、
「顔見た瞬間、5秒で決めた」
と後で豪語することになる。
面談は形式的だった。
戦隊ヒロインとしての心構え、守秘義務、覚悟。
さつきはすべてを、理知的かつ完璧に語った。
理想論ではない。
浮つきもない。
責任を理解した上での言葉。
遥室長は内心で確信し、
真帆はメモを取る手を止めた。
(この子は、絶対に欲しい)
こうして、
お友達紹介キャンペーン適用第3号は、満場一致の一発合格となった。
後日。
紹介者・彩香のもとに、例の“粗品”が手渡される。
中身は――
・麗奈ちゃんプリペイドカード
・幻の戦隊ヒロイン手ぬぐい
彩香は一瞬だけ中を確認し、
「……ショボっ」
と苦笑いした。
そこへ現れる、美月。
「なぁ彩香、粗品、何やったん?」
「国家機密や」
「またそれや!誰も教えてくれんやん!」
「知りたかったら、自分で候補者見つけきい」
美月、食い下がる。
「干し芋より嬉しいモンなん?」
彩香、即答。
「噂になっとるけど、干し芋やないな」
播州弁が一段とどぎつくなる。
「そない気になるんやったら、あんたも徳島でも高知でも探してきたらええねん」
美月、完全敗北。
「……ぐぬぬ」
周囲は大爆笑。
粗品の正体は、また一段と神秘性を帯びていった。
こうして徳島県は、
ついに“完璧すぎる切り札”を手に入れた。
そしてヒロ室は理解する。
なつめが火なら、
さつきは水。
勢いで突破する高知。
品で制圧する徳島。
四国は、いよいよ面白くなってきたのである。
――なお、粗品の中身については、
この日も誰一人、真実を語らなかった。




