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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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370/494

えっ?えっ?が止まらない――歌姫に土佐弁が刺さった日

戦隊ヒロインの現場で、

「指示が伝わりにくい双璧」と言えば――

四日市の突貫娘・山本あかりと、

そしてもう一人。


歌姫・藤原詩織である。


あかりが「方向」が分からないタイプなら、

詩織は「状況」が分からないタイプだった。


イベント前日のリハーサル。

ステージ上には、

床に貼られた立ち位置テープ、

進行表、

秒単位で書かれた台本。


ヒロ室スタッフが説明する。


「詩織さんは、

一曲目が終わったら一歩下がって、

次がトーク、その後すぐ――」


「えっ?」


詩織、首を傾げる。


「えっと……

今の“その後”って、

歌の後の後ですか?」


「はい」


「えっ?」


横で見ていたスタッフ、

一瞬だけ目を閉じる。


別のヒロインが補足。


「つまり詩織は、

ここで立ち止まって、

次に喋るの」


「えっ?

今ですか?

それとも、みんなが喋った後?」


「今」


「えっ?」


この「えっ?」が、

リハーサル開始から

すでに八回目だった。


トークの順番確認。


「次、詩織さん、

三番目です」


「えっ?」


「三番目」


「えっと……

一番目は誰で、

二番目は……」


その瞬間、

どこからか声が飛ぶ。


「ストーップじゃき!」


全員が振り向いた。


そこに立っていたのは――

土佐の突進娘、神代なつめ。


腕を組み、

真剣な顔。


「しおりん、

その説明、難しすぎるき」


詩織、きょとん。


「……えっ?」


なつめ、

ホワイトボードをひっくり返し、

床に立つ。


「ほいたら見とき」


なつめが動く。


「まず、歌うろ?

ここでドーン!」


大げさに歌うジェスチャー。


「終わったら、

一歩バッと下がる!」


一歩下がる。


「ほいたら、

サッと前向いて、

“こんにちはー”じゃ!」


深々とお辞儀。


「それで、

一人喋ったら、

横でニコニコじゃき」


親指を立てる。


説明、終了。


時間、三十秒。


詩織の目が、

ゆっくりと輝き出す。


「……あっ」


「分かった?」


「分かりました!」


全員、

一瞬静まり返る。


「つまり、

歌って、

バッて下がって、

サッて出て、

ニコニコですね?」


「そうじゃき!」


なつめ、満足そうに頷く。


「えっ……

私、今までの説明より、

すごく分かりました……」


ヒロ室スタッフ、

無言でメモに書く。


《次回から

詩織への説明=土佐式》


その後の通しリハーサル。


驚くほど、

詩織は止まらなかった。


立ち位置、完璧。

トーク順、理解。

動線、問題なし。


しかも――

なぜか口調が変わってきている。


「次、私じゃき?」


「ここでサッと行けばええんですね?」


周囲、ざわつく。


「詩織、

今“じゃき”言うた?」


詩織、はっとして口を押さえる。


「あっ……

すみません、

つい……」


なつめ、豪快に笑う。


「えいがよ、

その方が分かりやすいき!」


本番直前。


詩織が、

なつめに小声で聞く。


「なつめさん、

次のMC、

私どのタイミングで行けば……」


なつめ、即答。


「前の人終わったら、

バッじゃ」


「……バッですね」


詩織、深呼吸。


「よし……

バッと行きます」


本番。


完璧だった。


終演後、

スタッフ控室。


「今日はスムーズでしたね」


「詩織さん、

えっ?って言わなかった」


「奇跡では?」


詩織本人が、

少し照れながら言う。


「なんか……

理屈で考えるより、

体で覚えた方が、

分かりやすかったです」


なつめ、頷く。


「難しいこと、

頭に詰め込んだら、

歌えんなるき」


詩織、目を丸くする。


「……確かに」


その瞬間、

詩織は気づいた。


「……あれ?

私、今、

ちゃんと理解して喋ってます……」


全員、笑う。


こうして――

理屈が迷子になりがちな歌姫は、

土佐弁という謎解釈で覚醒した。


難解な指示は、

「バッ」「サッ」「ニコニコ」。


ロジックは雑。

だが結果は正解。


突進娘・神代なつめは、

今日もまた一人、

現場を救っていた。


本人は、

「当たり前じゃき」と

思っているのだが。

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