『バッと行ってサッとやるき!』――土佐の突進娘、現場を制圧する
千葉市内、国道16号線沿い。
ファミレス激戦区のど真ん中にある、いつもの店。
昼はトラックの運転手と営業マン、
夜は家族連れと学生でごった返す。
戦場のような店で、今日も指揮を執るのが――
神代なつめだった。
「ほいたらランチ来るきね!
みのりんホール!
洗い場バッと回して、
キッチンはサッと応援じゃ!」
声はでかい、
指示は大雑把、
だが店は一切止まらない。
新人指導も独特だ。
「理屈は後回しじゃき。
まず動き覚えよ」
そう言うや否や、
なつめは体ごと動く。
「注文はこうバッと取って、
通路はサッと抜けて、
皿はガチャン言わんようにフワッ!」
擬音だらけ。
だが、分かる。
三日後には外国人留学生が
「バッ、サッ、OKデス!」
と完全に土佐弁化。
主婦パートも大学生も、
気づけば同じ言葉を使っていた。
「ここ、バッと行ってサッと戻るんやんな」
この店の共通語は土佐弁。
その勢いは、
戦隊ヒロインの現場にも持ち込まれる。
問題児は――
四日市の突貫娘、山本あかり。
「え、右ってこっちやんな!?
あ、ちゃう?
あれ?どっちやったっけ?」
そこへ、
理論派参謀・西園寺綾乃が、
はんなりと、しかし確実に詰める。
「……あかりはん。
右言うたら、
“あなたから見て”右どすえ」
「えぇ~!?
そんな難しい言い方せんといてぇ」
結果、
あかりは逆方向へ突進。
「何回言わすねん!
右言うたら右やろが!」
と播州の雷・彩香が落ちるのが、
もはや日常だった。
そこへ――
なつめが一歩前に出る。
「待ちな、あかりちゃん」
綾乃を見る。
「難しい話、してはるのう」
綾乃、にっこり。
「理屈いうのは、
戦場では命守るためどすえ」
なつめ、首を振る。
「ほいたら、
考えすぎて動けんなるき」
ホワイトボードを掴み、
勢いよく前へ。
「敵ここ!
ほいたら、こうバッと出て、
サッと横抜けて、
ドン!じゃき!」
理論ゼロ。
擬音100%。
だが――
あかりの目が輝く。
「……あっ!
それなら分かるわ!
こうやってドーンやな!」
次の訓練。
綾乃が丁寧に説明を始めた瞬間、
あかりはなつめを見る。
なつめ、
親指を立てる。
「バッじゃ」
あかり、
完璧な動き。
綾乃、沈黙。
「……結果としては、
合理的……どすな」
悔しそうに、
しかし認めざるを得ない。
彩香がぼそり。
「最近、
あかりにキレる回数減ったわ」
訓練後。
綾乃がなつめに歩み寄る。
「……あなたはん、
理論を壊す天才どすえ」
なつめ、豪快に笑う。
「難しいこと考えんでえいき。
体が先、頭は後じゃ」
綾乃、はんなり溜息。
「……理解できひんけど、
現場では頼りになる人どすな」
あかりが頷く。
「うん!
なつめさんの言い方やと、
体が先に動くんやわ!」
こうして――
理論派と突進派の間に、
土佐弁という翻訳装置が置かれた。
「バッと行ってサッとやるき!」
今日もどこかで、
誰かがそれで救われている。




