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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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367/470

神対応? いや通常運転じゃき!――土佐の突進娘、ファンサ概念ゼロ

イベント終了後の控室。

外ではまだ歓声が続いていた。


「神代なつめ! 神対応すぎる!」

「ファン一人一人ちゃんと目見て話してくれた!」

「距離近っ!」


SNSはすでにお祭り状態だった。


しかし当の本人、

神代なつめはというと――


「いやあ、楽しかったのう!」


汗を拭きながら、実に晴れやかな顔。


その横で、

理世がタブレットを見つめて無言になっている。


「……“神対応ヒロイン爆誕”ですか」


「なにが神なん?」


なつめが首をかしげる。


「普通やろ?

来てくれた人と喋って、

笑って、

写真撮って、

元気出してもろうて帰ってもらう。

それだけじゃき」


理世、即座に反論。


「それを“それだけ”と言えるのが異常です。

通常は――」


「え? みんなせんが?」


「……“みんな”は、

体力配分と距離感と安全確保を――」


なつめはすでに聞いていなかった。


なぜなら、

控室のドアの隙間から子どもが覗いていたからだ。


「おっ!」


なつめ、即反応。


「どうした? トイレか? 写真か?」


警備が止める前に、

なつめはしゃがんで目線を合わせている。


「今日は楽しかったか?」


子ども、こくん。


「よっしゃ!

ほな明日も元気出して学校行けよ!」


その一連の流れを見て、

周囲のヒロインたちは静かにドン引きしていた。


美月が小声で言う。


「……あれ、マニュアルにないやつやろ」


みのりも頷く。


「完全に素です」


理世は冷静に分析を始める。


「ファン心理を考慮すると、

距離の近さ、反応速度、

感情表現の濃度――」


「考えすぎじゃき!」


なつめ、即ツッコミ。


「楽しいかどうかじゃろ!」


理世、言葉を失う。


イベントスタッフが報告に来る。


「神代さん、

今日のファンアンケート、

過去最高です」


「え、そうなん?」


なつめ、きょとん。


「なんか特別なことしました?」


スタッフ一同、沈黙。


「……いえ、

“特別なことをしていないように見えるのが特別”

というか……」


理世が呟く。


「それが“神対応”という概念です」


なつめは腕を組んで考えた。


「うーん……

ほいたら、

みんなも同じようにやればええやん?」


その瞬間、

全員が一斉に首を横に振った。


「無理」

「できん」

「体力もたん」

「距離感壊れる」


理世が締める。


「あなたは、

ファンサービスを“業務”としてではなく、

“娯楽”として消費しています」


「そりゃ楽しいき!」


「それが問題なのです」


だが、そのとき。


外から聞こえる声。


「なつめちゃーん!」

「また来るねー!」


なつめは手を振り返す。


「おー! また来いや!」


控室が一瞬、静まり返る。


理世は深く息を吸い、

理知的に敗北宣言をした。


「……理解はできません。

ですが、

成果は否定できません」


なつめは笑った。


「理世もそのうち分かるき!」


「分かりたくはありません」


こうして――


“神対応ヒロイン”と呼ばれながら、

本人だけがそれを通常運転だと思っている女

神代なつめは、


今日も無自覚のまま、

ファンの心を根こそぎ持っていくのだった。

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