切り込みは土佐、仕上げは房総。 ――富士川で炸裂する突進コンビ――
富士川の山あいにある、
「国家特務戦隊ヒロイン中央研修複合学習センター富士川分室」
通称「ヒロイン・アカデミー富士」。
正式名称はやたら長いが、要するに――
戦隊ヒロインが本気で走って転んで殴って反省する場所である。
この日、その敷地に、
誰よりも先に声が響いた。
「おはようございますじゃき!!」
山が揺れた。
神代なつめ。
土佐の突進娘。
まだ制服の着方も完全には馴染んでいないが、
声量だけはすでにベテランだった。
集合したヒロインたちが、
一斉に耳を押さえる。
「……朝から強いな」
と、誰かが呟く。
この日の訓練は戦闘想定。
模擬敵役の訓練員がフィールドに展開し、
複数チームに分かれて制圧する。
隼人補佐官が説明する。
「今回は連携がテーマだ。
勢いだけで突っ込むのは――」
説明、終わらない。
「了解じゃき!」
なつめ、もう走っている。
「待て! まだ開始の――」
笛が鳴る前に、
なつめはフィールドへ突進。
その背中を見て、
隼人補佐官は天を仰いだ。
「……ああ、
そういうタイプだったな」
だが。
ここで、
館山みのりが動いた。
「……なつめさん、
行くなら――」
一拍。
「正面突破、任せます」
みのりは冷静だった。
破壊力抜群。
房総の嵐。
なつめの無謀な突進を、
前提条件として受け入れたのだ。
なつめは敵陣に突っ込む。
「どけどけどけー!!」
勢いだけで、
訓練員二名を吹き飛ばす。
だが、
その瞬間、包囲される。
普通なら、ここで終了。
だが。
みのりが、静かに息を吸った。
「……今です」
次の瞬間。
《房総大演舞》
風が変わった。
地面が揺れた。
敵役が、
まとめてひっくり返った。
なつめ、目を丸くする。
「え、
もう終わり?」
フィールドは静まり返り、
倒れた訓練員だけが転がっている。
隼人補佐官、
腕を組んで満足げにうなずく。
「……なるほど」
解説が始まる。
「神代の突進で敵の注意が正面に集中する。
そこへ館山が最大火力を叩き込む」
一拍。
「これは強力だ」
ヒロインたちがざわつく。
「雑じゃない?」
「でも強い……」
なつめは、
みのりに駆け寄った。
「すごいじゃき!
なんで分かったが?」
みのり、少し照れて。
「……
勢いが、
分かりやすかったので」
こうして、
即席でなつめ×みのりのホットラインが成立した。
午後の模擬戦。
なつめは、
もう合図を待たない。
だが、
無茶はしない。
みのりの位置を確認し、
突っ込む。
「今じゃき!」
「はい」
ドン。
――全滅。
隼人補佐官、
完全に満足。
「いいな。
これは使える」
なつめは汗だくで笑う。
「よく分からんけど、
勝てばええがやろ?」
みのり、即答。
「はい。
勝てばいいです」
富士川の夕暮れ。
突進と房総が噛み合った日、
戦隊ヒロインの戦術ボードに、
新しい一行が書き足された。
《切り込み:土佐/仕上げ:房総》
――単純で、
だが、やたら強い。
隼人補佐官は、
その文字を見て静かに笑った。
「……賑やかになってきたな」
そしてなつめは思う。
「訓練、
案外おもしろいき」
この娘、
まだまだ止まらない。




