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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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360/459

標準語、敗北。 ──国道16号線を制圧した土佐弁ファミレスの女──

千葉市内、国道16号線沿い。

誰もが一度は見たことのある、

あの有名ファミレスチェーンがひしめく激戦区に、

問題の店舗はあった。


ランチタイムはトラックドライバーと営業マン。

ディナータイムは家族連れと部活帰りの学生。

朝から夜まで休む暇なし。


そんな修羅場を、

一人で回している女がいた。


神代なつめ。


ホールに立てば、


「いらっしゃいませぇぇ!!

 空いとる席、今すぐ案内するき!!」


洗い場に入れば、


「皿は溜めたら負けやき!

 一気に流すでぇぇ!!」


キッチンに呼ばれれば、


「火ぃ強すぎ!

 それ、焦げるがやき!!」


――全部、土佐弁。


この店では、

ホールも洗い場もキッチンも、

なつめが全部見る。


理由は簡単。


「忙しいき、

 誰かに頼むより自分がやった方が早いがやき!」


論理は雑だが、結果は出す。


後輩指導も豪快だった。


「ミスしてもええ!

 声出さん方が罪やき!」


新人は最初ビビる。

三日で慣れる。

一週間後には声がデカくなる。


問題は、

外国人留学生のアルバイトだった。


普通なら言葉の壁がある。

だが、この店では違った。


なつめは迷わず言った。


「分からんかったら、

 とりあえず“いけるき!”って言うとき!」


結果。


「イケルキ!」

「マカセルトキ!」

「ダイジョブヤキ!」


――土佐弁が共通語になった。


SNSとグルメサイトは騒然。


・「元気すぎるファミレス」

・「土佐弁で応援される店」

・「なんか元気もらえる」


売り上げは右肩上がり。

隣のライバルチェーンを軽く蹴散らす。


しかし――

本部が黙っていなかった。


「全国画一的なサービスを守ってください」

「方言は禁止」

「標準語で接客してください」


なつめ、初めて理解不能の顔。


「……なんで?」


翌日から、

この店は別物になった。


「いらっしゃいませ」

「少々お待ちください」

「かしこまりました」


――静か。


客が減った。

ホールが止まった。

キッチンが詰まった。


グルメサイトの評価は急落。


・「元気がなくなった」

・「普通のファミレスになった」

・「あの土佐弁が良かったのに」


ついには、

本部に苦情が届く。


「土佐弁、復活させてください」


会議室で、

本部担当者が頭を抱えた。


「……例外、認めます」

「土佐弁、黙認で」


その瞬間。


「よっしゃあああ!!」


なつめの声が店内に響いた。


翌日。


「いらっしゃいませぇぇ!!

 今日も元気に営業中やき!!」


客、戻る。

売り上げ、復活。

外国人スタッフ、土佐弁全開。


そして、

静かに変化する人物が一人。


館山みのりである。


「こちらのお席…

 空いとるき」


「ドリンクバー、

 向こうやき」


――完全に感染。


真帆の評価は一言だった。


「……現場破壊力、Aランク」


波田顧問は笑った。


「勢いだけで店一つ支配するとはな」


こうして。


国道16号線の一角に、

土佐弁が支配するファミレスが誕生し、

その中心にいた女は、

戦隊ヒロインとしてスカウトされることになる。


考えない。

止まらない。

だが、人を動かす。


それが――

土佐の突進娘・神代なつめ。


そして今日も、

みのりの口から自然に出る。


「次のお客さん、

 案内するき」


――もう戻れない。

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