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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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358/499

声がデカけりゃ即採用! ──土佐の突進娘、ヒロ室に現る──

新橋ヒロ室のミーティングスペースは、この日、珍しく静かだった。

書類の山。鳴り止まない電話。

安岡真帆が無表情でスケジュールを整理し、遥室長がコーヒーをすする。


「……次のお友達紹介、誰やったっけ」


ぽつりと誰かが言った瞬間。


扉が開いた。


「どーもォォォォ!!

 高知から来ましたァ!!

 神代なつめ言いまぁぁす!!」


空気が、揺れた。


音圧で。


一瞬、

ヒロ室にいた全員の視線が、

館山みのりに突き刺さる。


みのりはいつもの標準語で、

淡々と補足した。


「……私の、バイト先の先輩です」


※責任を感じている顔ではない。


神代なつめは、

土佐弁丸出し、前のめり、笑顔全開。


「みのりちゃんには

 いつも世話になっちゅうき!!

 今日はよろしくお願いしまぁぁす!!」


その声量で、

ヒロ室の壁が一段階、古くなった。


この瞬間。


奥の椅子にどっかり座っていた

波田顧問が、腕を組んだまま一言。


「……よし」


全員「え?」


波田顧問、立ち上がる。


「採用だ」


真帆が即座に食い下がる。


「顧問、まだ面談すら──」


「いらねぇ」


遥室長が慌てる。


「いやいや、流石にそれは……」


波田顧問、即答。


「挨拶で腹から声出せるヤツは信用できる」


理屈が昭和。


なつめ、目を輝かせる。


「え!?

 もう決まりですか!?」


「決まりだ」


「ありがとうございますッ!!」


その「ありがとうございます」で、

また一段階、壁が古くなった。


波田顧問は満足そうに頷く。


「最近なぁ、

 上品で、理知的で、

 空気読めて、

 気配りできるヒロインばっかりだろ」


全員、心当たりがありすぎて黙る。


「それもいいがな」


一拍置いて。


「たまにはこういう

 ノリと勢いだけのヤツが必要なんだよ」


太鼓判だった。


みのりが小さく呟く。


「……ですよね」


※最初から分かっていた顔。


一方、

神代なつめはもう、

自分がヒロインだと信じきっている。


「戦隊ヒロインって、

 走るんですか!?

 叫ぶんですか!?

 殴る前に名乗ります!?」


彩香が即ツッコむ。


「順番むちゃくちゃや!!」


なつめ、即返し。


「順番は現場で覚えます!!」


※覚える気はある。


真帆は内心で思った。


(……これは

 制御不能だが

 放り込むと場が動くタイプ)


メモにこう書いた。


「神代なつめ:突進担当」


最後に波田顧問が締めた。


「よし。

 この子はな、

 考えさせるな。

 走らせろ」


遥室長、苦笑い。


「……分かりました。

 責任は顧問持ちで」


「当たり前だ」


こうして。


お友達紹介キャンペーン適用第2号

高知県出身・神代なつめは、


・面談なし

・書類ほぼ未確認

・声量のみで


戦隊ヒロインの門をくぐった。


そして今日も、

ヒロ室はにぎやかだ。


「みのりちゃぁぁん!!

 次どこ走ります!?」


「……右です」


「了解です!!」


走る。


止まらない。


だが――

なぜか現場は前に進んでいる。


勢いだけの女、

意外と使える。


そんな予感を残しつつ、

土佐の突進娘は

今日も元気に、

ヒロ室を揺らしていた。

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