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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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357/510

主役じゃないのに、いないと回らない女  ――流山発・戦隊ヒロインの良心――

森川美里は、千葉県流山市出身である。


都心へのアクセスがよく、

緑と住宅街が調和した、

「住みたい街ランキング」にだいたい載っているあのエリア。


派手な観光地はない。

名物もそこまで強くない。

だが住民の満足度は高い。


――この時点で、

美里本人の性格をほぼ説明していると言っていい。


戦隊ヒロインプロジェクトに

“お友達紹介キャンペーン適用第1号”として加入してから、

美里は一度も大きなトラブルを起こしていない。


それどころか、

トラブルが起きる前に現場を丸くしている。


派手に目立つことはない。

決め台詞もない。

バズる奇行もない。


だが、

「美里がいる現場は荒れない」

という評価だけは、いつの間にか全員の共通認識になっていた。


千葉県ヒロインといえば、

言うまでもなく館山みのりが圧倒的である。


声援。

地元愛。

存在感。


全部が強い。


普通なら、

「千葉枠」で比較され、

内心モヤっとしてもおかしくない。


だが、美里は違った。


インタビューで言った。


「みのりんは千葉の太陽みたいな人なので。

 私は横で日陰を作る役でいいです」


優等生コメントすぎて、

一部ヒロインから

「逆に怖い」

と言われたほどだ。


みのり本人は、

「……嫌味じゃないよね?」

と一応確認したが、

美里は即座に首を振った。


「本心です」


このやり取りで、

千葉県内ヒロイン抗争は自然消滅した。


美里の転機になったのは、

“断らなすぎ問題”が爆発しかけた、あの一件だった。


過密スケジュール。

過労寸前。


そこで珍しくキレたのが、

自己顕示欲の塊・大宮麗奈だった。


「使い潰す気!?

 この人、便利屋じゃないから!」


この一件で、

美里と麗奈の関係は変わった。


それまでは

「仲のいい同僚」

だったのが、


今では

「文句を言う係」と「受け止める係」

という、

妙に完成されたコンビになっている。


美里は後でこっそり言った。


「麗奈さんに怒られると、

 なんか…守られてる感じがして」


麗奈は聞こえないふりをしたが、

その日ずっと機嫌がよかった。


現在の美里の立ち位置は、

ヒロ室フロントから見ると相変わらずこうだ。


「困ったら美里」

「美里なら何とかする」

「とりあえず美里入れとく?」


完全に便利屋扱いである。


だが、美里本人はそれを気にしていない。


「便利って、信頼の別名だと思うので」


この発言を聞いた真帆は、

一瞬だけ言葉を失い、

心の中でこう思った。


――一番政治に向いてない顔で、

 一番政治的に正しいことを言う人だ。


華やかな外見。

長身。

八頭身。


なのにポジションは地味。


前に出ない。

奪わない。

張り合わない。


それでも、

いなくなると困る。


いつの間にか美里は、

ヒロイン内でこう呼ばれるようになった。


「戦隊ヒロインの良心」


派手な正義じゃない。

熱血でもない。


ただ、

誰かが壊れそうなときに、

そっと隣にいる存在。


真帆はこう評価した。


「森川美里は、

 前線を引っ張るタイプではありません。

 ですが――

 この人がいないと、

 前線は必ず荒れます」


遥室長も頷いた。


「流山らしいですね。

 住んでみて初めて、

 良さが分かる」


美里は照れ笑いしながら、

いつものように言った。


「これからも、

 できることを、できる範囲で」


その言葉通り、

彼女は今日も主役ではない。


だが――

全員が安心して主役になれる理由にはなっている。


森川美里。

華やかだが地味。

万能だが控えめ。


そして確定した。


彼女はもう、

“キャンペーン適用第1号”ではない。


戦隊ヒロインの良心枠。

それ以上でも、それ以下でもない。


……たぶん本人は、

その重さに一生気づかないまま。

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