表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

352/464

粗品は国家機密、現場は満杯――断らない女と断れない組織

お友達紹介キャンペーン適用第1号。

それは栄誉であり、同時に呪いでもあった。


ヒロ室の片隅で、赤嶺美月が腕を組んで首を傾げる。


「なあ麗奈さん。紹介者の粗品って、何やったん?」


この問いに、

大宮麗奈は一瞬だけ間を置き、ニヤリと笑った。


「それはねぇ……国家機密♡」


「は?」


「口止めされてるから言えないの。もらってからのお楽しみ〜♡」


美月は眉をひそめる。


「なんやそれ。逆に怖いわ」


「大丈夫大丈夫。命までは取られないから」


「余計あかんやろ」


この“粗品”の話題は、

なぜか聞くたびに周囲の温度を一段下げる。


本人――麗奈は、

バッグの奥にしまった例のブツについて、

それ以上一切語ろうとしなかった。


一方で、

キャンペーン第1号として迎えられた森川美里は、

その静かな性格ゆえに、思わぬ事態を招いていた。


「森川さん、来週の地方イベント、行けます?」


「はい、大丈夫です」


「翌日の午前も?」


「はい」


「その足で午後は別会場なんですが」


「問題ありません」


真帆のペンが止まる。


「……夜もあります」


「行けます」


真帆、無言でスケジュール表に赤丸を三つ打つ。


麗奈が横から覗き込み、思わず声を上げた。


「ちょっと待って。

それ、普通は一個断るやつだから」


美里はきょとんとする。


「そうなんですか?」


「そうなの。私は文句言って一個減らすの」


「……なるほど」


理解はしたが、

次の瞬間、美里はこう言った。


「でも、私でよければ……」


その一言が、すべての引き金だった。


真帆は仕事ができる。

できるが、情は薄い。


「助かります」


その言葉と共に、

美里の現場は指数関数的に増えていった。


小規模イベント。

地方の商業施設。

平日の企業展示会。

休日の親子向けステージ。


「断らない人がいると、世界は回る」


真帆は淡々とそう言った。


控室で、

美里は紙コップの水を飲みながら小さく笑った。


「ちょっと忙しいですけど、楽しいです」


それを聞いた麗奈が、珍しく真顔になる。


「……無理してない?」


「してないです」


「ほんとに?」


「はい。だって――」


美里は少し照れながら言った。


「麗奈さんが喜んでくれるなら」


この一言に、

自己顕示力の塊・大宮麗奈は完全にやられた。


「……もう」


そっぽを向きつつ、口元は緩む。


「人気出てきたじゃない。

紹介した私の株も上がるし」


「それが本音ですか?」


「八割」


イベント終了後、

観客の反応は明らかだった。


「さっきの人、感じよかったね」

「派手じゃないけど、安心する」


静かな拍手。

じわじわ伸びる評価。


麗奈は腕を組み、満足げに頷く。


「ほらね。

あんたは“断らなすぎる”けど、

それが向いてる世界もあるのよ」


美里は苦笑した。


その頃、

ヒロ室では美月がまだ気にしていた。


「なあ……粗品、ほんまに何なん?」


麗奈は振り返り、にっこり。


「だから国家機密だって♡」


この粗品が、

後に“伝説の粗品”と呼ばれることを、

この時点で知る者は、まだ少なかった。


ただ一つ確かなのは――

断らない女が現場を救い、

断れない組織がそれを詰め込む。


そして今日も、

ヒロ室は静かに回っていた。


粗品の正体を伏せたまま。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ