播州の烈火 ― 西川彩香伝
姫路の空気には、どこか鉄の匂いがする。
城下町の誇りと、職人の意地が溶け合う土地で、西川彩香は育った。
父・西川剛史――
かつて社会人野球で名を馳せた男。
常に「勝負」と「誇り」という二文字を背負って生きた、まさに播州の鉄人だった。
「泣くなら筋を通してから泣け」
「勝てん日があっても、逃げる日は作るな」
そんな言葉が、幼い彩香の耳に焼き付いた。
兄と同じ練習メニューを課せられ、
性別など関係なく、バットを握り、泥にまみれ、
時に鉄拳が飛んだ。
それでも彩香は泣かなかった。
むしろ、その厳しさが“生き方の型”になった。
大人になった彩香は、誰よりも冷静で、誰よりも熱い。
仲間にも妥協を許さず、己にも一切の甘えを見せない。
赤嶺美月に「融通きかん女」と言われても、
西園寺綾乃に「もうちょっと丸うなりぃ」と笑われても、
彼女の背筋はびくともしない。
「甘さは敵。筋の通らん勝利なんぞ、勝ちやない。」
それが、西川彩香という女の哲学。
火のように燃え、鋼のように曲がらぬ――
まさしく「播州の烈火」。
彼女の一閃が敵を切り裂くたび、
その影には、今も姫路の空で黙って見守る父の姿がある。




