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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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346/458

反省会の定義が違います ――鉄仮面ヒロイン、感情を議事録に落とす――

交通安全イベントが終わった夜。

ヒロ室の小さな会議スペースでは、いつもの「イベント後の反省会」が始まろうとしていた。


参加者は三人。

庶務と裏方の要で臨時ヒロインの高島里奈。

尾張弁で場を回すムードメーカー、山田真央。

そして――

鉄仮面と称される法曹界ヒロイン、内田あかね。


里奈が穏やかに口を開く。


「今日はお疲れさまでした。全体としては、事故もなく、参加者の反応も良くて……」


「子どもが“標識クイズ”で盛り上がっとったなぁ」

真央がにこにこと頷く。


ここまでは、いつもの反省会だった。


――ただし。


内田あかねが、無言で鞄を開けるまでは。


机の上に並べられるA4用紙。

一枚、二枚、三枚……。


「……え?」

里奈の声が一段階、小さくなる。


表紙には、太字でこう書かれていた。


《交通安全イベント実施後

法的・運営的検証報告書(暫定)》


真央が固まる。


「……反省会って、書類提出会やったっけ?」


あかねは淡々と答えた。


「反省会とは、問題点を洗い出し、再発防止策を構築する場です。

よって、記録と分析が必要不可欠です」


そう言って、資料を一枚めくる。


「まず一点目。

“優しく声をかけましょう”という進行台本の文言ですが、

これは具体性に欠け、運用上の責任所在が不明確です」


真央、思わず口を挟む。


「そこツッコむとこなん!?」


「次に、記念撮影時の“並んでください”という誘導。

これは同意取得の明確性に問題があります」


里奈は必死にフォローに入る。


「内田さんの指摘、とても勉強になります。

ただ、反省会では“気持ち”や“雰囲気”も……」


「気持ちは主観です」

即答だった。

「共有義務はありません」


沈黙。


真央が、腹を抱えて笑い出す。


「すごいな……感情がリーガルチェックに引っかかっとる!」


あかねは首をかしげる。


「不適切でしょうか?」


「不適切やない、致命的や」


里奈は、この時ようやく理解した。

この人は、“反省会”を人の会話だと思っていない。


あかねにとって反省会とは――

次の訴訟を防ぐための模擬審査会なのだ。


真央が軽いノリで言う。


「でもさ、子どもたち楽しそうだったじゃん?」


あかねは一瞬も迷わない。


「“楽しい”は評価指標として不明確です」


その場にいた全員が悟った。

あ、これはもう別ジャンルだ、と。


里奈は深呼吸して言った。


「では、こうしましょう。

第一部は内田さんの“検証タイム”。

第二部で、感想や雑談を行う、二部構成にします」


真央が手を叩く。


「分業制や!

法と人情のハイブリッド!」


あかねは少し考えたあと、頷いた。


「……合理的です」


真央が小声で囁く。


「今、“合理的”って言うたぞ。進歩や」


こうしてヒロ室に、新しい不文律が生まれた。


《内田あかね参加の反省会は二部制》


第一部――

感情を排した、完璧な法的検証。


第二部――

人間が人間であることを確認する時間。


里奈は後で思った。


一番反省が必要だったのは、

イベントでも、進行でもなく――

反省会の定義そのものだったのだ、と。


そして今日も、

鉄仮面ヒロインは感情を議事録に落とし、

ヒロ室はなんとか回っていく。


それが、このチームの日常だった。

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