表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

340/465

「臨時です(※常設)」――高島里奈という静かな非常事態

高島里奈は、あくまで臨時ヒロインである。

それは書類上、公式サイト上、そして遥室長の口頭説明においても、何度も何度も強調されてきた。


「臨時ですからね」

「期間限定です」

「常設ではありません」


本人も、その認識だった。


「はい、あくまで“つなぎ”として……」

そう言って、今日も会場設営用のガムテープを切っていた。


だが――

問題は、現場の空気だった。


ある日、イベント会場。


「じゃあ、里奈さんはいつも通り裏で全体見てください」


スタッフが何の疑いもなく言う。


「……あの、私、今日は“臨時ヒロイン”として表に……」


「え? いや、里奈さんが裏にいないと困ります」


一瞬の沈黙。


「……あ、はい」


このやり取り、すでに三回目だった。


別の日。


控室。


「里奈さん、来月のイベントスケジュールです」


差し出された紙には、

三か月先までの予定がびっしり。


「……臨時、ですよね?」


「そうです。

“臨時の常設枠”です」


里奈はその日本語を、心の中で二回噛み砕いた。


ヒロ室内では、もはや説明すら省略されていた。


「里奈はいる前提で」

「里奈が不在だと現場が荒れる」

「里奈が来ないと、椅子が足りなくなる」


誰も悪気はない。

むしろ、最大級の信頼だった。


だが、本人だけが置き去りだった。


極めつけは、公式資料。


《ヒロイン一覧(最新版)》

※臨時枠含む


その下に、堂々と。


高島里奈(常設運用)


里奈は静かに手を挙げた。


「……“臨時”はどこに……?」


真帆が一瞬だけ目を逸らした。


「……あれですね。

臨時が長期化すると、

常設になるんですよ」


「それ、最初に言ってほしかったです……」


一方、ヒロイン側の反応は様々だった。


美月:「もうおるのが当たり前やん」

美音:「遠州弁的には“もう家族だら?”やら」

理世:「システム的に、彼女は不可欠です」


誰一人、“臨時”を主張しない。


そして迎えた、とある地方イベント。


トラブル発生。

出演順変更。

機材トラブル。

雨。


会場がざわつく中、

無意識のうちに全員が振り返った。


そこにいたのは――

資料をまとめ、無線を持ち、

動線を整理している里奈。


誰かが呟いた。


「……あ、もう大丈夫だ」


その瞬間、

里奈は完全に常設化した。


イベント後、遥室長が声をかけた。


「里奈さん。

一応、区切りとして聞きます」


里奈、背筋を伸ばす。


「臨時ヒロイン、

ここまでにしますか?」


少しだけ、間があった。


「……正直に言っていいですか?」


「どうぞ」


「もう、どこまでが“臨時”か分からないです」


遥室長は笑った。


「それでいいんです」


数日後。


ヒロ室掲示板に貼り紙が増えた。


《高島里奈 取り扱い注意事項》

・いない前提で話を進めないこと

・急に休ませると現場が混乱する

・本人に“臨時”と言うと少し困る


里奈はそれを見て、苦笑した。


「……臨時って、難しいですね」


その声は小さく、

だが確実に、ヒロ室に馴染んでいた。


派手な活躍はない。

センターにも立たない。

だが――


誰もが思っていた。


「この人がいないと、回らない」


こうして、高島里奈の物語は

いったん、静かに中締めとなる。


――臨時なのに、

誰よりも“常設”なままで。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ