たい焼き戦線・関ヶ原を越えて ― 西日本VS播州、砂糖より熱い仁義なきスイーツ戦争 ―
昼下がりの控室。
訓練後のご褒美として、机の上にずらりと並んだたい焼き。
ふっくら焼けた香ばしい匂いが漂う中、
事件は――いや、戦争は起きた。
「ほな、いただきま〜す!」
赤嶺美月は手を合わせると、ためらいもなくたい焼きの尻尾にガブッ。
それを見た西川彩香がピタリと手を止めた。
「……おい、美月。なんで尻尾から食べるんや?」
「は? なんでって、普通やん。たい焼きは尾っぽからやろ。」
「いや、頭から食べるのが礼儀や。
たい焼きも“顔つき”やぞ? まずは挨拶代わりに頭から――」
「何言うてんねん! たい焼きはな、頭からいったら中身のあんこが
ドバァッて出てくるやろが!
尾っぽから食べるんが一番上品で実用的や!」
「そんなの言い訳や。
たい焼きにだって“魂”があるんや。
頭から食べんと、なんかこう……裏切ってる気がするやろ。」
「いやいやいや! 西日本の人間は尾っぽから食べるって決まっとる!
関ヶ原から西は全部そうや!」
「聞いたことないでそんな謎ルール!
勝手に“たい焼き西日本協定”とか作るなや!」
(ピリピリピリ……)
控室の空気が微妙に緊迫し始める。
まるで戦隊ヒロインの内部抗争。
横で紅茶を啜っていた西園寺綾乃が、ゆっくりと扇子を閉じた。
「お二人さん、ええ加減にしはったらどないどす?
たかがたい焼き、されどたい焼きやけど……
ここは京の流儀で、真ん中からいく、いうのはどないどす?」
二人「……真ん中!?」
「そや。
頭でも尻尾でもなく、仲よう分け合う真ん中。
争いごとは、折り目をつけるところに平和があるんどす。」
(静寂)
美月と彩香は顔を見合わせ、
「……まぁ、真ん中も悪くないな。」
「……そうやな。あんこ、均等やし。」
そして二人は、たい焼きを真ん中で割り合った。
ふわりと湯気が立ち、甘い香りが漂う。
綾乃が優雅に微笑んだ。
「ほらな? 真ん中は、ええとこどりどす。」
そこへ遥広報官が入ってきて言った。
「あなたたち、また何か揉めたの?」
美月と彩香、同時にたい焼きを頬張りながら答える。
「平和的解決や!」「折衷案や!」
綾乃が扇子をパチンと鳴らして締める。
「――たい焼きに学ぶ、戦隊ヒロイン外交術。」




