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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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330/464

白いリボンは代役可 ― 陽菜が休む日ほど騒がしい

白石陽菜は、戦隊ヒロインの中でも別格だった。

鮮やかな黒髪のポニーテールに、きゅっと結ばれた白いリボン。

ステージに立てば、子どもは手を振り、大人は頷き、スポンサーは即座に前のめりになる。


「陽菜ちゃん、今日も出番長めでお願いします!」


そんな声が、イベント前の控室で何度も飛ぶ。


しかし、その「長め」を決めるのはスポンサーでも、現場スタッフでもない。

ヒロ室フロントの安岡真帆と、主治医の紗絢、そして看護学生の美紀の三人だった。


「今日は三十分以内。後半は様子見」

「心拍、ちょっと不安定です。途中で切りましょう」

「万一があったら、即休演で」


その会話は淡々としているが、全員が本気だ。

陽菜本人はというと、頷きながらも申し訳なさそうに笑う。


「ごめんなさい、せっかく来てくれる人がいるのに」


「それを判断するのが大人の仕事ですから」

真帆は穏やかに、だが一切譲らない声で言う。


そして、ある日の地方イベント。


開演一時間前。

美紀がタブレットを見つめ、静かに言った。


「……今日は厳しいです。休演で」


その瞬間、控室に一瞬の沈黙が落ちた。


「陽菜、今日は休も」

紗絢がそう告げると、陽菜は少し残念そうに、でも素直に頷いた。


「わかりました。皆さん、よろしくお願いします」


だが問題は、ステージの向こう側だった。


会場には「陽菜目当て」で来た観客がぎっしり。

休演のアナウンスが流れると、ざわめきと落胆の空気が広がる。


そのときだった。


「――しゃあない! ほな、代打行くでぇぇ!!」


舞台袖から飛び出してきたのは、

白い戦隊ヒロイン制服に、白いリボンを頭に結んだ赤嶺美月だった。


「白石陽菜です☆ 今日は元気いっぱいでーす☆」


完全に声が違う。

イントネーションも違う。

なのにポーズだけは完璧だった。


ぴょん、と小動物のように跳ね、

くるっと回って手を振り、

観客席に向かって首をかしげる。


「みんなー! 会いたかったぁ〜♡」


一拍遅れて、会場が爆笑に包まれた。


「誰やねん!」

「いや、似てるぞ!?」

「動きが陽菜ちゃんすぎる!」


美月は調子に乗る。


「今日はぁ〜! バトンもやっちゃうよ〜!」


そう言って取り出したのは、見覚えのあるバトン。

美月は高校時代、バトントワリング経験者だった。


くるり、くるり。

回転は少し雑だが、動きは驚くほど本格的。


「おおおお!」

「陽菜ちゃん……いや違う!」

「でもすげぇ!」


舞台袖で見ていた陽菜は、思わず口を押さえた。


「……私、あんな感じなの?」


隣にいた美紀が一拍置いて答える。


「……大体あってるよ」


二人は同時に吹き出した。


「ちょっと大げさすぎない?」

「そこは美月さんなので」


ステージ上では、美月がさらに暴走していた。


「はい! ここで陽菜名物・無駄に全力お辞儀〜!」


深すぎるお辞儀。

そのまま前につんのめり、危うく転びそうになる。


「危なっ!」

「今のも陽菜っぽい!」

「いや、違うだろ!」


会場は完全に温まっていた。


最終的に、美月は胸を張って言った。


「本物は今日はお休みや!

 せやけどな、休む勇気もヒロインの仕事やで!」


この一言に、拍手が起きた。


イベント終了後。

控室に戻った美月は、白いリボンを外しながら言う。


「いやー、陽菜の代役は疲れるわ」

「常に可愛いって、体力いるな」


陽菜は深々と頭を下げた。


「ありがとうございます。救われました」


「何言うてんねん」

美月は照れ隠しに笑う。

「陽菜は陽菜でええんや。休むときは、全力で休め」


その光景を、真帆と紗絢は黙って見ていた。


「……現場、助かりましたね」

紗絢が言う。


「ええ」

真帆は小さく笑う。

「今日一番ヒロインだったのは、美月さんかもしれません」


その夜、陽菜は少しだけ安心して眠れた。


白いリボンは、

今日は誰かが代わりに結んでくれた。


――それでいい日も、あるのだ。

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