火花、浪花と播州の境界線
訓練場第2ブロック。
午前の基礎訓練が終わったあと、
赤嶺美月と西川彩香は、すでに二人だけの空間に火花を散らしていた。
「なぁ彩香、そない肩に力入れんでもええやん。
ヒロインは笑顔も仕事やで?」
彩香は眉ひとつ動かさず、美月を睨む。
「笑顔は任務のあとでええ。
戦いに出る前にヘラヘラしてどうするんや。緊張感が足りん。」
「はぁ? 何やて? あんたみたいな石みたいな顔してたら、
子どもら泣くで。イベント出禁やで?」
「……戦う前に化粧の心配してる奴に言われたない。」
ピキッ――と美月のこめかみに筋が浮く。
「おい播州! それどういう意味や!?」
彩香は腕を組んだまま、冷静に返す。
「意味のままや。任務は見た目やなくて結果や。」
「結果出すために笑顔も必要やろが!
そんなんも分からんのかいな、ほんま融通きかん女やで!」
「……うるさい浪花。口だけ動かす暇あるなら、腕立て百回せぇ。」
「なっ!? あんたに指図される筋合いないわ!」
二人の河内弁と播州弁が、訓練場の空気を真っ二つに裂いた。
周囲の隊員たちは思わず身をすくめる。
まるでタイガーとドラゴン。
それぞれが一歩も譲らない。
そこに、遅れて現れた綾乃が扇子を開いてため息をついた。
「ほんまにうるさいわぁ……。
うちの耳、南北戦争でも起きたんか思たわ。」
美月が振り向く。
「綾乃! 聞いてや! この播州のんがな、いちいち正論ぶっこむねん!」
「正論が気に入らん言うのも、立派な浪花論法どすな。」
綾乃はくすりと笑う。
彩香はじっと美月を見据え、
「……まぁ、あんたみたいなタイプがおるから、現場が明るうなるんかもな。」
とぼそりと呟いた。
美月はその一言に、少しだけ頬をかいた。
「最初からそう言うたらええやん。
……ま、しゃーないな。ほな、うちらええコンビなるかもな。」
彩香は苦笑して小さくうなずいた。
「ほな、次の訓練。真剣勝負で確かめよか。」
「望むところや、播州!」
「来いや、浪花!」
再び火花。
だがその火花は、もう対立ではなく――
互いを認め合うための、友情の初動反応だった。
綾乃はそんな二人を見つめ、呟いた。
「……ほんま、京都から見たらどっちも“熱すぎ”どすえ。」
河内の笑顔と播州の鋼。
ぶつかりながら磨かれていく二人の火花は、
やがてチームの象徴となる“黄金の情熱”になるのだった。




