鋼の女、播州より来たる
東大阪の訓練場に、乾いた風が吹いていた。
その日の空は低く、どこか張り詰めたような曇天。
赤嶺美月は腕を組み、ため息をひとつついた。
「新メンバー? またクセの強いのが来るんちゃうか?」
その隣で、京都の西園寺綾乃は涼しげに微笑んだ。
「うちとしては、誰が来てもええけどな。
まともに会話できる子やと助かるわぁ。」
そこへ、広報官・芹沢遥の落ち着いた声が響く。
「それでは紹介するわ。兵庫・姫路出身、西川彩香さん。」
――その瞬間、
入口のドアがガチャリと音を立てた。
まるで真っ直ぐに切り裂くような視線。
黒髪を後ろで束ね、無駄のない動作で敬礼する。
制服の端正さ、立ち姿、どこを見ても隙がない。
「西川彩香、兵庫県姫路市出身。
筋通らんことは嫌いや。以上。」
一礼。
声は低く、鋼のように冷えていた。
美月は思わず吹き出す。
「お、おお……めっちゃ播州やん。堅っっ!」
「なんやその挨拶。漫才の導入かいな。」
彩香はまばたきひとつせず、美月を見据えた。
「正義は遊びやない。鍛錬も、任務も、真剣勝負や。」
綾乃が扇子で口元を隠しながら、
「これはまた……風の強いおなごが来はったなぁ。」とつぶやく。
美月は肩をすくめて、
「まぁええやん。うちのチーム、いっぺんくらいピリッとした方がええ。」
彩香はその言葉に軽く頷いた。
「言うたな。なら、次の訓練で確かめよか。
どっちが“真のリーダー”にふさわしいか。」
空気が一瞬止まる。
綾乃は冷静に割って入った。
「まぁまぁ、お二人さん。戦うのは敵であって味方やあらしまへん。」
遥広報官は、そんな三人を静かに見守っていた。
「……良いバランスになりそうね。
火の大阪、知の京都、そして鋼の播州。
きっと、強い風が吹くわ。」
その日から、
“播州の刺客”ことバーニング・バンシー・西川彩香が
正式にチームへ加わった。
まだ三人。
だが、この三人が後に「黄金期」と呼ばれる戦隊の礎を築くことを、
誰も知らなかった。




