表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

316/471

一度決めたら、とことんたい ― 産業バス総出で推すヒロイン

熊本産業交通・本社ビルの朝は、いつもよりざわついていた。


原因は単純だった。


横断幕がデカすぎる。


「祝・西里香澄 戦隊ヒロインプロジェクト参加!」

その下に、やや文字が小さく――

「※熊本産業交通社員一同応援」


ビルの正面いっぱいに掲げられたそれを見上げて、

出勤途中の社員たちは思わず足を止めた。


「……こら、相当たい」

「こげん大きか横断幕、久しぶりに見たばい」


年配の運行管理役員が、腕を組んで言う。


「こらなぁ」

「野球部が都市対抗に出た時以来たい」

「しかも、あん時は一週間で外したとに」


別の古参社員が頷く。


「今回は違うばい」

「香澄ば、全社で推すって決めたけん」


――そう。

一度「応援する」と決めたら、

トコトコやるのが肥後人。


ブレーキは最初から付いていない。


■ 社内はちょっとしたお祭り


社内報は臨時号。


一面は当然、香澄。

二面は「戦隊ヒロインとは何か(社員向け解説)」

三面は「香澄の観光案内名言集」


「“この先、右手に見えますのが阿蘇の外輪山でございます”

 ――やっぱ、名文たい」


「ワシは“事故渋滞でも空気ば壊さんかった”あの回が好きたい」


掲示板には、社員の手書きメッセージ。


・「産業バスの誇り!」

・「熊本の顔として行ってこい!」

・「東京でもちゃんぽん食えよ!」(※誰も止めない)


営業所では、なぜか応援グッズ制作が始まり、

「香澄うちわ」「産業バス×戦隊ヒロインタオル」が量産されていた。


誰も指示していない。

誰も止めていない。


――これが、肥後もっこす。


■ 香澄、気圧される


その様子を、香澄は少し離れたところから見ていた。


「……やりすぎじゃなかですか?」


そう言いながら、

目はうっすら潤んでいる。


専務が、照れ隠しのように言った。


「応援すると決めた以上、

中途半端はせん」


「香澄は“熊本の人”として前に出る」

「それでよか」


香澄は、深く頭を下げた。


「ありがとうございます」

「私……絶対、恥かかせません」


すると、後ろから声。


「恥かかせたら、すぐ呼び戻すばい」

「その時は、またバス乗せるけん」


一同、大笑い。


香澄も、つられて笑った。


――この会社に育てられた。

――この街に支えられている。


その実感が、胸に落ちた。


■ 制服に刻む覚悟


戦隊ヒロイン制服の最終フィッティング。


鏡の前で立つ香澄の左袖には、

熊本産業交通の社章。


右袖には、

熊本県民なら誰もが知る、黒くて丸い人気者のイラスト。


「……重たいですね」


香澄がぽつりと言うと、

隼人補佐官が笑った。


「それ、覚悟の重さです」


香澄は、背筋を伸ばした。


「熊本を背負って出ます」

「熊本産業交通の人間として」


「戦隊ヒロインとして」


その姿を見て、

遥室長が静かに言った。


「ええ顔になったね」


出発当日。


本社前には、社員がずらり。


「いってらっしゃい!」

「気張れよー!」

「東京でも道案内したらよかとよ!」


香澄は、深く一礼した。


「行ってきます」


その背中に、

熊本の期待と愛情が、

これでもかというほど乗っている。


バスが動き出すと、

誰かが言った。


「……あれ?」

「横断幕、外さんと?」


専務が、きっぱり言った。


「そのまま」


「香澄が帰ってくるまで」

「いや、帰ってきてもそのまま」


一同、爆笑。


――こうして。


熊本産業交通は、

会社まるごとでヒロインを送り出した。


香澄は今日も、

熊本を背負って前に立つ。


左袖に社章。

右袖に、あの黒い人気者。


そして胸には、

肥後人の、まっすぐな心意気。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ