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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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315/457

首は縦に振らんばい ― 産業バスvs国家案件

熊本産業交通・本社応接室。

その日、空気はやけに重たかった。


「……で?」

「今度は誰が来なすったですか」


腕を組んだ営業部長の声は、

阿蘇山の噴火予報並みに低かった。


「内閣府、隼人補佐官です」


その瞬間、室内の全員が

「ほう」とだけ言った。


だが――

首は、誰一人として縦に振らん。


■ 第一ラウンド:若手官僚、単騎突入


「西里香澄さんの件ですが――」


隼人補佐官は、資料を広げ、

冷静に、丁寧に、論理的に話した。


・戦隊ヒロインプロジェクトの公共性

・九州展開における交通連携の重要性

・香澄の“地域の顔”としての価値


理屈は完璧だった。


しかし。


「ばってんですね」


営業部長が、にこりともせず言った。


「理屈は分かっとります」

「ばってん、うちのエースは出さん」


課長が頷く。


「香澄は商品じゃなか」

「人材です」

「しかも、うちが育てた」


専務が一言。


「若か官僚さん」

「熊本ば、なめたらいかん」


隼人補佐官、内心で思う。


(――これが肥後もっこすか……!)


■ 第二ラウンド:粘りの官僚、なお折れず


翌週。

隼人補佐官は再び現れた。


今度は、

・協業スキーム

・出向制度

・ブランド相互活用


完璧な“落としどころ”を用意して。


だが。


「出向?」

「期限付き?」

「そげんもんで安心できるとですか」


「香澄が疲れたら誰が守るとですか」

「東京は冷たかとでしょう」


隼人補佐官、思わず苦笑。


「……それは、私が守ります」


一瞬、沈黙。


だが専務は、首を横に振った。


「情は評価する」

「ばってん、信用は別」


完敗だった。


■ 最終ラウンド:熊本連合、出陣


そして、ついに。


応接室に現れたのは――

熊本県庁幹部職員

国交省九州整備局・局長クラス


空気が、変わった。


「いやぁ、今日は“相談”に来ました」


県庁幹部は、柔らかく笑う。


「西里さんの活躍は、

熊本にとっても誇りです」


局長が続ける。


「九州での公共イベント」

「地域交通と文化の連携」

「産業バスさんの協力があってこそです」


営業部長が、ゆっくり息を吐いた。


「……国も県も、そこまで言うなら」


専務が、しばらく黙り込み――

やがて、言った。


「条件がある」


全員、身構える。


「出向扱い」

「籍は熊本産業交通に置く」

「九州イベントでは、うちのバスを使う」

「香澄は“熊本の人”として前に立つ」


一拍置いて。


「それが飲めるなら、首を縦に振る」


隼人補佐官は、深く頭を下げた。


「……ありがとうございます」


■ 香澄の決意


その話を聞いた香澄は、

しばらく言葉が出なかった。


「会社が……

そこまで守ってくれたんですか」


専務は、ぶっきらぼうに言った。


「当たり前たい」

「育てた娘ば、簡単に手放すか」


香澄は、深く頭を下げた。


「……一生、この恩は忘れません」


■ 新たな形のヒロイン


こうして香澄は、

熊本産業交通からの出向として

戦隊ヒロインプロジェクトに参加することになった。


九州イベントでは、

産業バスの車両が並び、

「公式サポート」の文字が躍る。


香澄は思う。


熊本を出たんじゃない。

熊本を、背負って前に出たんだと。


そして今日も、

バスのマイクを握る。


「皆さーん、

本日は戦隊ヒロインイベントに

ご参加いただき、ありがとうございます」


その声は、

どこまでも、熊本だった。

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