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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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31/668

「皆さまのヒロイン」になれました

大型ショッピングモール「パーク・アークス」。

休日の朝だというのに、開店前から異様な熱気が漂っていた。


「やば……徹夜組まで出てるって、マジなん……?」


控室のモニターを覗き込んだ美月が、目をまんまるにする。

その隣で、いつも冷静な綾乃も「こんなに並んでくださるなんて……ありがたいことどす」と驚きを隠せない。


この日は、戦隊ヒロイン・レッドフレイム(美月)とブルー・インテリジェンス(綾乃)によるトークショー&サイン会イベント。

今では親子連れ、学生、若者、さらには地方からの遠征組まで列をなす、ヒロインイベントの名物となっている。


だが──


「……最初のサイン会、覚えとる?」


美月がつぶやくと、綾乃がふっと笑った。


「並んでいたのは、3人どしたな。うちと美月さんで5人分の机、ちんまり使って……」


「なぁ……風、スースーしとってん……広すぎて逆に気まずいっちゅーねん」


ふたりの笑いに、控室のソファで新聞を読んでいた一人の女性が顔を上げた。


「最初のチラシ、うちが印刷して持ってっただよ。50枚だけな。カラーにしたかったけど、経費の許可が下りなかったで」


それは、ふたりの活動を陰で支える政府広報官・芹沢遥だった。


落ち着いたネイビースーツ、緩やかにまとめた黒髪、180cm近い長身。

一見クールビューティな彼女が、ゆったりと笑って言葉を続ける。


「でも……コツコツやってきただよね、あんたたち。交通安全、青パト同乗、街頭啓発、ちっちゃい商店街の盆踊りまで」


「あと、犬のふん放置撲滅キャンペーンとかもありましたね」

「せやった!フンを許すな!って書いたヒーローポスター、今でも残っとるかも」


「ふたりとも、真剣だったで。うちは、そこが一番、嬉しかっただよ」


遥は柔らかく微笑みながら、二人の制服の襟を軽く整えた。


「今日は“皆さまのヒロイン”として、堂々と行ってきな。

静岡から富士山越えてでも応援しに来た甲斐があるら」


「それでは皆さん、お待たせしました!

“皆さまの戦隊ヒロイン”が、ついに登場です!」


MCの呼びかけと同時に、会場の照明が落ち、大歓声が湧き起こる。

赤と藍の制服に身を包んだふたりがステージに現れると、

子どもたちの「わぁー!!」「ヒロインだー!」という歓声とともに、

大人たちからも大きな拍手が湧き上がった。


ふたりはマイクを取る。


「みんな、うちらのこと、見つけてくれてありがとなー!」(美月)

「今日だけやなく、これからもよろしくお願いしますえ」(綾乃)


その光景を、後方からそっと見守る芹沢遥。


ふっと目を細めると、ひとり静岡弁でつぶやいた。


「……あんたたち、ほんとに、立派になったらぁ」

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