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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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304/460

この部屋、うるさすぎませんか? ― 盛岡から来た静音兵器・中野柚希

新橋ヒロ室のミーティングスペースは、その日も平常運転だった。

平常運転、つまり――動物園である。


「せやから言うてるやろ! それはウチの立ち位置や!」

「はぁ!? そこ昨日あたしが立ったとこやん! 記憶力どないなっとんねん!」


赤嶺美月と西川彩香。

内容のない、声量だけは一流の争いが勃発していた。


机を叩く美月。

腕を組んで睨み返す彩香。

もはや何の話をしているのか、本人たちも分かっていない。


そこへ、

「まぁまぁ……お二人とも、そんなに声張らんでもよろしおすえ」


西園寺綾乃が、はんなりと割って入る。

声音は柔らかいが、目は笑っていない。


「ここは会議室どす。動物園やあらしまへん」

「誰がサルやねん!」

「いや、言うてへん言うてへん」


仲裁しているようで、微妙に刺す。

京都仕草である。


彩香がむくれる。

「ほら~、綾乃まで敵に回したら不利やん?」

「最初から敵やろ」

「何言うてますの。わたしは常に“中立”どす」


――その横で。


東日本ヒロイン側は、まるで別世界だった。


みのりとひかり、グレースフォースの二人は、相変わらず静かに隣同士。

「今日の構成、民話パートが入るの良いですね」

「うん、感情曲線が安定する」


詩織が喉を気にしながら言う。

「今日は乾燥してますね……」

陽菜がすぐに反応する。

「ですね。喉に来ます」

美紀が即座に続ける。

「詩織さん、あとで加湿器入れましょう。声帯は消耗品です」


誰も怒鳴らない。

誰も揉めない。

知性の暴力である。


ベイサイドトリニティの三人は相変わらずバラバラだ。

澪は壁にもたれてスマホ、

沙羅は腕を組んで天井を睨み、

理世はペンを回しながら完全に別世界。


そこへ――


ヒロ室の扉が開いた。


遥室長が、いつもの少し丸い駿河弁で言う。

「えー……みなさん、ちょっと静かにしてもらっていいですかね」


当然、すぐには静かにならない。


「だからあたしが先やって!」

「いやウチや!」

「お二人とも、後でお茶にしますえ?」


遥室長、深呼吸。


「……盛岡市在住の、中野柚希さんです」


その瞬間。

空気が一段、落ちた。


入口に立っていたのは、

派手さゼロ、主張ゼロ。

だが、不思議と目が離れない女性。


色白で、東北らしい柔らかな輪郭。

服装は地味だが整っている。

そして何より――騒がない。


「……中野柚希です。盛岡から来ました」


南部弁が、ほんのり残る。

声は小さいのに、なぜか全員に届いた。


美月が思わず言う。

「……めっちゃ静かやな」

彩香が頷く。

「逆に怖ない?」

綾乃が微笑む。

「嵐の前の静けさ、いうやつどすな」


遥室長が続ける。

「佐々木玲香さんと一緒に、東北を中心に活動してもらう予定です」


視線が、玲香へ集中する。


玲香は一瞬だけ柚希を見て、

「……よろしくお願いします」

と、珍しく丁寧に頭を下げた。


柚希は少し笑って、

「こちらこそ、よろしくお願いします」

と返す。


詩織が小さく呟く。

「……空気、変わりましたね」

陽菜が頷く。

「うん、冷房つけたみたい」


澪がぼそっと言う。

「この人……騒音キャンセラー」


沙羅は鼻で笑う。

「どうせすぐ染まるでしょ」

だが理世だけは、何も言わなかった。


柚希は部屋を一度だけ見渡し、心の中で静かに整理する。


(西日本側:音量過多)

(仲裁役:京都)

(東日本側:湿度管理完璧)

(全体:……面白い)


そして、何事もなかったかのように椅子に座る。


その瞬間、

新橋ヒロ室には――

盛岡発・静音兵器が正式配備されたのだった。

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