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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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303/460

拍手は少なめ、根性は多め ― 新生ベイサイドトリニティ現場復帰

神奈川県内の老人ホームと福祉施設を巡る慰問活動。

 そこに、相変わらず三人並んで立っているのがベイサイドトリニティ――澪、沙羅、理世だった。


 ただし以前と違うのは、立ち位置である。

 舞台の上ではなく、段ボールの山の横。

 マイクではなく、養生テープ。


「このコード、里奈さんの言う通り床沿いに流すと、ほんと邪魔にならないな……」


 沙羅が、若干感心した声を出す。

 その横で理世も黙々と椅子を並べながら頷いた。


「……確かに。前なら“裏方なんて”って思ってた」


 それを聞いて、澪は相変わらずよく分からない顔で首をかしげる。

「え、裏方楽しくない? この静かな達成感」


 ――掴みどころがない。

 それは相変わらずだった。


 その様子を、少し離れた場所から見ているのが、平塚美波と大宮麗奈である。


「……沙羅と理世、変わったわね」

 美波が小声で言う。

「ええ。顔つきが違います」

 麗奈も静かに同意した。


「そろそろ、戻してもいい頃合いかもね」

「“みんなのところへ”、ですね」


 二人は目線だけで頷き合った。


 ――そして、その“復帰の場”に選ばれたのが、千葉県木更津市だった。


 東京湾アクアラインの玄関口。

 港町としての歴史と、アウトレットモールに象徴される新しさが同居する街。

 潮の香りと、どこかのんびりした空気が混ざる、千葉らしい場所である。


 この日のイベントは豪華だった。

 小春、グレースフォースのひかりとみのり、そして麗奈。

 人気者が勢ぞろいだ。


 そこに、ひっそりと――いや、一応胸を張って――並ぶ新生ベイサイドトリニティの三人。


「……扱い、雑じゃない?」

 沙羅が小声で言う。

「雑だね」

 理世も即答。

「え? でも“その他”って枠、居心地よくない?」

 澪はなぜか前向きだった。


 ステージが始まる。

 歓声はまず、地元千葉のスター・みのりに集中する。


「みのりー!!!」

「千葉愛!!!」


 圧倒的である。


 その後、ひかり、小春、麗奈と続くが、拍手の量が段階的に減っていくのが分かる。

 そして――ベイサイドトリニティ。


「……がんばれー」

「……お、おう」


 声援、少なめ。


 しかもよく見ると、サックスブルーのTシャツを着た集団が、やけに統率の取れた拍手を送っている。


「あれ、澪後援会だ」

 理世が即座に見抜いた。

「……サクラ?」

「サクラだね」

「でも、来てくれるだけありがたいよ」


 結果。

 三人束になっても、地元千葉のみのりの半分にも満たない声援。

 その半分は、澪後援会という名の“組織的応援”。


 ――だが。


 舞台に立つ三人の表情は、不思議と以前ほど曇っていなかった。

 裏方を経験し、現場の重さを知ったからだ。


 終演後、楽屋で美波が声をかける。

「どう? 久しぶりの表舞台」

 沙羅が苦笑する。

「正直、悔しいです」

 理世も続ける。

「でも……前より冷静に見えてます」

 澪はいつもの調子で言った。

「声援少ないと、自分の声がよく聞こえるよ」


 麗奈が静かに微笑んだ。

「それなら大丈夫ですね」


 こうして――

 長く、辛く、どこか昭和じみた研修を経て、

 ベイサイドトリニティは、ようやく本格的に現場へ戻ってきた。


 拍手はまだ少ない。

 扱いも、正直雑。

 だが足元は、以前よりはるかに安定している。


 ――新生ベイサイドトリニティ。

 再始動。


「彼女たちは、ようやく“戦う場所”に戻ってきた。

 声援の数ではない。

 立ち続ける覚悟こそが、ヒロインをヒロインたらしめるのだ――」


 そんなナレーションが、どこからか聞こえたような気がした。

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