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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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302/473

裏方から拍手まで三歩 ― ベイサイドトリニティ再訓練中

ベイサイドトリニティの復帰ロードは、今日も地味に続いていた。

 派手なステージ、きらびやかな照明――そんなものはない。あるのは、神奈川県内の老人ホームや福祉施設、そして段ボール箱と折り畳み椅子とガムテープである。


「はい、今日は横浜の次は藤沢、そのあと平塚ね」


 地図を広げて指示を出すのは、湘南の毒舌クイーン・平塚美波。

 その隣でうなずくのが、大宮麗奈。落ち着いた声で全体を見渡す。


「移動が多いから、準備と撤収はスピード重視でいきましょう」


 その言葉に、ベイサイドトリニティの三人――澪、沙羅、理世――は背筋を伸ばした。

 今日は“演者”ではない。まずは裏方だ。


 会場設営の中心にいるのは、ヒロ室スタッフの高島里奈と、アルバイト学生の内田あかね。

 手際がいい。無駄がない。


「コードは床沿いね。車椅子の方が引っかからないように」

「椅子は詰めすぎない方が安心ですよ」


 そのアドバイスを、澪がメモを取りながら聞く。

「なるほど……確かに」


 沙羅と理世も半信半疑ながら、言われた通りに動いてみる。

 すると不思議なことに、準備がスムーズに進み、会場の空気も柔らいだ。


「……あれ、なんか、ちゃんとできてる?」

「思ったより、手応えある」


 沙羅が小声で言うと、理世が珍しく同意した。


 慰問が始まると、さらに驚く光景が待っていた。

 里奈とあかねが、入所者とのふれあいタイムで前に出たのだ。


「じゃあ次は、ボール回しゲームでーす!」

「はい、私が受け取りますね~」


 声が明るい。間がいい。

 笑いが起き、拍手が自然に広がる。


 それを袖から見ていた麗奈が、ぽつりと美波に言った。

「……意外と、演者向きかもしれませんね」

「でしょ?」

 美波はニヤリと笑う。


 澪が思わず呟く。

「私たちより、楽しそう……」


 沙羅が慌てて否定する。

「ち、違う!私たちは今、修行中だから!」

 理世も腕を組む。

「……でも、あの自然さは、見習うべき」


 慰問後、休憩室で反省会。

 里奈とあかねは照れたように手を振る。


「いえいえ、私たちは裏方が本職ですから」

「前に出るなんて、たまたまですよ」


 だが美波は首を振る。

「謙遜が過ぎると損するわよ」

 麗奈も穏やかに続ける。

「今は考えなくていいけど……将来の可能性としては、十分です」


 二人は顔を見合わせて笑った。

「いやいや、戦隊ヒロインなんて」

「想像もしてません」


 その言葉に、澪はどこかほっとした。

 ――まだ、ライバルじゃない。


 この日を境に、ベイサイドトリニティの三人は変わり始めた。

 里奈とあかねからもらったアドバイスを実践し、裏方としての動きが洗練されていく。

 そして少しずつ、演者として前に出る時間も増えていった。


「裏を知ると、表が怖くなくなる」

 澪がそう言うと、沙羅が頷く。

「プライドだけじゃ、何も回らないって分かった」

 理世は静かに締めた。

「……今度こそ、ちゃんとやり直せる気がする」


 その様子を、美波と麗奈は黙って見守っていた。

 そして里奈とあかねは、今日も裏方として走り回る。


 ――この二人が、近い将来“戦隊ヒロイン”として名を連ねることになるなど、

 この時点では、誰も本気で考えていなかった。


 だが現場は、いつも静かに未来を仕込んでいる。

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