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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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301/519

舞台は短く、会報は分厚く ― ベイサイドトリニティ再起動

 復帰――その言葉は甘美だが、現実はだいたい地味だ。

 ベイサイドトリニティの三人、澪・沙羅・理世は、平塚美波を中心に大宮麗奈も賛同する“慰問キャラバン”に同行することになった。派手な凱旋ではない。各地を回り、笑顔を届け、裏も表もやる。地味だが、これが正しい再始動だった。


 横須賀市の小児終末ケアセンター。

 この日の三人はまず会場設営。ヒロ室スタッフの高島里奈と、アルバイト学生の内田あかねと一緒に、机を運び、配線を整え、風船を膨らませる。

 沙羅が汗をぬぐいながらぼやく。「……ステージより息切れする」

 理世は椅子の列を見て腕組み。「この配置、観客目線だと見やすい……かも」

 澪はケーブルを巻きながら、静かに頷いた。「うん、こういうの、嫌いじゃない」


 そして今回は、美波の計らいで短時間出演。

 MCはもちろん美波。開口一番、軽く毒を飛ばす。

「えー、本日のゲストは“復帰してすぐ働かされる三人組”です。拍手!」

 沙羅と理世は苦笑い。だが舞台に立つと、空気が変わる。

「……やっぱり、舞台の上はいい」

「息が合うと、ちゃんと楽しい」

 ふたりは実感した。

 一方、澪は少し違った。

「私、裏の方が落ち着くかも」

 自分の声に、自分で驚いた。


 舞台後のミニゲーム。入所者との触れあいで、思わぬ主役が現れる。

 高島里奈がハリキリすぎて、全力リアクション。

「はいはい!次は私が鬼でーす!」

 会場は爆笑。

 澪がぽつり。「……私より、演者向いてるんじゃないの」

 沙羅が即ツッコミ。「言うな。本人がその気になる」


 慰問が終わると、美波のありがたいダメ出しタイム。

「短時間でも、間の取り方は良かった。ただ――」

 沙羅には「主役感を出しすぎないこと」、理世には「客の体調を見ること」、澪には「裏方に逃げすぎないこと」。

 三人は素直に頷いた。今日は“怒られた”より“教わった”が勝った。


 数日後。

 久々に発行された澪後援会会報が届く。

 表紙は大見出し。

「世界へ羽ばたくベイサイドトリニティ再始動!」

 提灯記事はほぼ大本営発表。

「横須賀市内・小児終末ケアセンターで笑顔を振りまく澪!」

 ――ここまでは、まだ分かる。


 しかし、ページをめくると様子が変わる。

「29日ニクの日!骨付きカルビ半額」

「18時までハッピーアワー 生ビール100円」

「パチンコ新台入替」

「キムチ専門店オープン」

 生田緑地のイベント、市政情報まで網羅。

 澪は唖然。「……私の記事、どこ?」

 沙羅が指差す。「この三行」

 理世が真顔。「でも実用性は高い」


 結果――

 澪後援会、会員数1万人突破。

 本人の露出は控えめ、活動は地味。なのに、会報は地域密着で大好評。

 澪は苦笑する。「私の低迷と、会報の好調が反比例してる……」

 美波が肩を叩く。「いいじゃない。地に足ついてる証拠よ」


 こうしてベイサイドトリニティは、派手ではないが確実な一歩を踏み出した。

 舞台は短く、裏は長く、会報は分厚い。

 再始動は、いつだってそんなものだ。

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