正義のエールは届く!
「いっちょ、やったろかいな!」
準々決勝が終わった夜、美月は部屋の壁に貼った試合予定表を見て、ぐっと拳を握った。
都市対抗野球――大阪市代表チームはは、一回戦で優勝候補の一角だった東京都代表チームを破った勢いそのままに、
二回戦では名古屋市の鉄道会社チーム、準々決勝では川崎市代表の総合家電メーカーと、次々に強豪を撃破して駒を進めていた。
美月は毎試合、応援チアとして全力で跳ね、そして5回裏には戦隊ヒロイン・レッドフレイムとしてスタンドショーを披露。
「正義はスタンドからや!」という決め台詞は子どもたちの間でもちょっとした流行になっていた。
そして迎えた準決勝。
相手は千葉市代表、「京葉スチール」。都市対抗の常連であり、圧倒的な動員力とブラスバンドの迫力で知られる大企業チームだ。
「すっご……千葉、観客数ハンパない……」
「スタンドの圧、音圧、勢い……なんか全部ゴツいな」
大阪市側の三塁スタンドも応援団・チア・一般客が一丸となって声を張り上げる。
そして、五回裏。
「レッド・フレイム、今日も参上やでっ!!」
ヒロインショーが始まると、千葉側スタンドからもどよめきが起こる。
子どもだけでなく、なぜか中年男性陣もスマホを構えてノリノリだった。
試合は一進一退の接戦。
だが9回表、千葉の4番打者が値千金のタイムリーツーベースを放ち、大阪は3-4の惜敗。
試合後――。
大阪スタンドは一瞬、静まりかえった。
しかし、その数秒後、鳴り響いたのは……大きな拍手だった。
スタンドのあちこちから、
「ようやった!」
「ナイス応援や!」
「レッドフレイム最高ーっ!!」
美月は最前列の柵にもたれかかり、ちょっとだけうるっとしていた。
さらに、選手たちがグラウンドからスタンドに向けて深く頭を下げる。
「スタンドから力もろたで!」
「応援なかったらここまで来れてへん!」
汗と涙とポンポンが混じる中、美月は言った。
「うち……これが“正義の応援”なんやなって……思ったわ……」
翌日。
大会最終日に行われた応援団コンクールの結果が発表された。
「大阪市 最優秀賞!!」
チアメンバーは抱き合って喜び、美月は「マジか!?」と口をあんぐり開けた。
「なあなあ、これって……ヒロインショー効果やんな?なぁ、なぁ?」
「……どや? 正義って、ちゃんと評価されるやろ?」
誰にともなくつぶやいたその声は、東京ドームの屋根の下に、少しだけ誇らしげに響いていた。
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この結果の通信社の報道
【都市対抗】大阪市応援団が最優秀賞 “ヒロインショー”が話題呼ぶ
(東京ドーム発)
都市対抗野球大会の応援団コンクールで、大阪市応援団が最優秀賞を受賞した。
力強いチアリーディングと一体感あるスタンドの盛り上がりに加え、国家プロジェクト「戦隊ヒロイン」に所属する大学生チアリーダー・赤嶺美月さんによる“戦隊ヒロインショー”が、観客の注目を集めた。
試合中の応援に加え、五回裏終了時には赤い制服姿のヒロイン「レッド・フレイム」として登場。
子どもたちと一緒に正義のポーズを披露し、東京ドームのスタンドを笑顔で包んだ。
審査員は「ユニークな試みながら、応援本来の“場を盛り上げる力”に忠実。チームと観客を繋いだ」と評価。
観客からは「ヒロイン目当てで来たのに試合にもハマった」「応援ってここまで楽しくできるんだ」といった声も上がった。
赤嶺さんは「まさか最優秀賞とは…!応援も正義も全力で楽しめました」と喜びを語った。




