表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/31

赤嶺家の人々

東大阪の閑静な住宅街。その一角に佇む赤い屋根の二階建てが、赤嶺美月の実家である。


外から見ればごく普通の家庭に見えるが、玄関の戸を開けた瞬間、飛び込んでくるのは関西特有の「ツッコミと愛」に満ちた、まるで昭和のホームドラマのような賑やかさだ。


「みーちゃん、靴、脱ぎっぱなしやで。ヒロインやったら戦場だけやのうて玄関もビシッとせなあかん!」


と笑いながら注意するのは、母・春菜。

年齢は40代後半だが、姿勢も肌も服装も完璧。近所のスーパーでは毎回「女優さんかと思いました!」と言われ、本人は照れ笑いしながらも「まあ昔はちょっとヤンチャしてたからな〜」と意味深に笑う。


それもそのはず。春菜は今なお、かつてのギャル時代を彷彿とさせるキラリとした瞳を残しており、その全身からは“ただ者ではない感”がにじみ出ている。


そしてその隣で新聞を読みながら苦笑しているのが、父・真人。

大手企業の部長職というしっかり者……のはずが、時折「新作ダジャレ思いついたんやけどな」と言い出し、美月から容赦なく「それ、昭和やで」とツッコミを食らっている。

娘には甘々で、どんな奇抜なヒロイン衣装でも「みーちゃん、世界一かわいいで」と真顔で言える男。それが彼である。


そんな両親を支えるのが、近所に住む祖父母だ。


祖父・清一は、鉄と油にまみれた町工場の現役社長。頑固一徹、無口かと思いきや、「任侠映画は人生の教科書」と断言する一面を持ち、孫の美月に“義理人情”のイロハを叩き込んだ張本人である。

ある日突然、5歳の美月がぬいぐるみ相手に「ワレ、筋通さんかったらどうなるかわかっとるんかい」と啖呵を切ったのも、彼の影響だと噂されている。


一方、祖母・花はその対極。おっとりとした口調で家族を見守りつつ、実は地元の河内音頭保存会の古参メンバーという一面も持つ。夏祭りでは着物姿で軽やかに踊り、孫たちからは“リズムの魔女”とひそかに呼ばれている。


――そして、もう一人。


赤嶺家とは血縁関係ではないが、娘のように馴染んでいる少女がいる。

西園寺綾乃。名家の出身で、戦隊ヒロインとしては美月の相棒であり、対照的な存在。

冷静沈着、上品で知性派。話し方も、笑い方すらも“はんなり”している。

だが、美月のこととなると時折「しゃあない子やなぁ」と微笑みながら付き添っている姿は、もはや“戦隊界の姉妹漫才”と評されるほどの名コンビぶりを発揮している。


赤嶺家は、個性と愛がギュッと詰まった小さな宇宙だ。

そして、そこに育った美月の「ヒロイン魂」は、今まさに全国を席巻している――。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ