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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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297/472

博多と小倉は別の国 ― お節介が命を抱きしめた日

浜崎莉央は、最初から違和感を隠さなかった。


「茉莉花さんさぁ……

同じ福岡県やけど、博多と小倉は全然ちがうけん」


博多弁でさらっと言う。


黒崎茉莉花は腕を組み、即座に返した。


「そりゃそうよ。

小倉と博多は別もんやけ。

同じ県や思われる方が迷惑っちゃ」


開始三秒で火花が散った。


地理の話をしているはずなのに、

内容はほぼ文化戦争だった。


「博多は“上品”が売りやろ?」

「小倉は“肝据わっとる”が売りたい」

「博多は柔らかい」

「小倉は鋼」


聞いていたヒロインたちは、

「どっちも怖い」という結論に達した。


だが――

この二人、致命的に相性が良かった。


茉莉花の長男・大翔が控室を走り回っているのを見て、

莉央のスイッチが入る。


「大翔くん、その服……

ちょっと動きにくくない?」


「え? そう?」


三十分後。


大翔はやたら動きやすそうで可愛い服に変わっていた。


「……あんた、子ども服まで手ぇ出すん?」


「当たり前やろ。

動けん子どもは、罪たい」


「博多怖いわ……」


だが茉莉花は、

その“怖さ”が嫌いではなかった。


そんなある日。


イベント控室の隅で、

陽菜が胸を押さえて座り込んでいるのを、

偶然この二人が目撃した。


「……陽菜?」


「だ、大丈夫です。

いつものことですから」


笑おうとするが、

顔色は明らかにおかしい。


莉央が先に動いた。


「“いつも”は、

大丈夫の理由にならん」


茉莉花も同時に立ち上がる。


「ちょっと待ちなさい。

それ、絶対大丈夫やない」


本人は気丈に振る舞うが、

二人の九州人は一切信じなかった。


そこに小春が来て、

空気を読まず、うっかり言った。


「あ……

陽菜、不整脈あるから……」


――沈黙。


「……は?」


「……今、何て?」


しまった、という顔の小春。


「ご、ごめん……

本当は一部の人にしか……」


かん口令が敷かれた。


だが、

時すでに九州人は暴走状態だった。


その日のうちに、

主治医の 藤崎紗絢 と

看護学生の 松本美紀 が呼び止められた。


「大丈夫なんですか!?」

「ほんとに!?」

「隠しとる場合やないやろ!?」


二人とも、涙目で詰め寄る。


圧が強すぎて、

美紀が一歩下がった。


紗絢は深く息を吸い、

医師の顔になった。


「……主治医として言います。

世界的にもかなり特殊な症例です」


二人の顔から、笑いが消えた。


「5年先の命を、

保証することはできません」


言葉が落ちた。


「この仕事は、

絶対におすすめできない」


茉莉花が目頭を押さえた。

莉央は唇を噛みしめた。


「でも」


紗絢は続ける。


「それで、

本人が幸せなのかどうか」


沈黙。


そして二人は、

同時に頭を下げた。


「……お願いします」

「絶対に助けてください」


九州人特有の、

遠慮ゼロの懇願だった。


紗絢は静かに答えた。


「絶対に助けたい。

少しでも長く、

陽菜がヒロインとして輝けるように」


「だから私は、

寝る暇も惜しんで世界を回っています」


その日から――


茉莉花と莉央は、

異常なほど親切になった。


陽菜に栄養指導。

紗絢に差し入れ。

美紀に参考書と夜食。


「これ、体冷やしたらいかんやろ」

「今日、仮眠取った?」

「無理しとらん?」


お節介が止まらない。


陽菜が苦笑する。


「……二人とも、

ちょっと過保護すぎです」


「今さら何言いよるん」

「もう逃がさんよ?」


博多と小倉。


別の国。

別の文化。


だが――

命を前にすると、同じ九州だった。


お節介で、情に厚くて、

どうしようもなく優しい。


その日から、

この二人はこう呼ばれる。


――九州連合・過保護部隊。


誰よりも騒がしく、

誰よりも真剣に、

誰よりも命を抱きしめる女たちとして。

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