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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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291/474

経理が回れば、ヒロインも回る ― 北九州式・空気改善作戦

黒崎茉莉花がヒロ室の経理を“ちょっと手伝い始めた”――

 それだけのはずだった。


 だが、その「ちょっと」は、

 ヒロ室全体の歯車を静かに、確実に動かしていく。


 まず、真っ先に変わったのは――

 谷口佳乃けちのんと福永理沙の顔色だった。


「最近……夜、寝れる」


 けちのんがぽつりと漏らした一言に、

 周囲がざわついた。


「え、けちのんが!?」

「睡眠って概念あったん!?」


「あるわ!!

 私だって人間や!!」


 これまで二人は、

 ヒロインの経費、企画予算、精算処理に追われ、

 現場に出る余裕など皆無だった。


 だが茉莉花が入り、

 伝票の初期チェックと修正を引き受けるようになると――

 世界が変わった。


「理沙、今週末のイベント、行けるよ」


「……行っていいの?」


 その瞬間、

 福永理沙の目がキラリと光った。


 元・証券会社勤務。

 数字と理屈で生きてきた女が、

 再びステージに立つ時が来た。


 復活したのは、

 あの伝説の企画。


 ――

 「戦隊ヒロインによるマネー相談会」


「貯金は“目的”がないと増えません」

「リスクは敵じゃない、理解する対象です」


 理沙の説明は分かりやすく、

 なぜか安心感がある。


 そこに茉莉花が加わる。


「投資ってな、

 “怖いもん”やなくて

 “生活を守る傘”みたいなもんなんよ」


 小倉弁で語られる資産防衛論。


 こうして生まれた新企画――

 「戦隊ヒロインによる資産防衛策」


 会場は満員。

 質問は止まらず、

 アンケート満足度は驚異の数値を叩き出した。


 一方その頃、

 余裕ができたのはもう一人。


 ――けちのん。


「……たまには、現場も悪くない」


 そう言って、

 大阪イベントに参加した彼女は、

 思わぬ才能を開花させる。


 美月、まどか、けちのん。


 三人が揃えば、

 そこはもう漫才の舞台だった。


「経費ってなぁ!」

「夢を数字で殴る作業や!!」

「誰が殴っとんねん!!」


 こうして誕生した――

 「トリオ・ザ・大阪」


 コテコテの大阪弁で、

 ボケて、ツッコんで、

 最後はなぜか家計管理の話に着地する。


 観客は大爆笑。

 そして、なぜか勉強になる。


「笑って学べるって、

 最強やん……」


 誰かがそう呟いた。


 気づけば、

 以前はどこか張り詰めていたヒロ室の空気が、

 驚くほど柔らいでいた。


 誰もが少し余裕を持ち、

 誰かの仕事を誰かが助ける。


 その中心にいるのが――

 黒崎茉莉花だった。


「私?

 なんもしとらんよ」


 そう言って笑う茉莉花の背中を見ながら、

 遥室長は静かに頷いた。


「……大きなプラスやね」


 派手な必殺技も、

 目立つセンターもない。


 だが、

 組織を回す力は、

 間違いなくヒーローの力だった。


 ヒロ室は今日も回っている。


 少し笑いやすく、

 少し働きやすくなった空気の中で。


 その真ん中に、

 九州女が一人――

 どっしりと立っていた。

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