表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

288/474

修羅場は場数、人生は肝っ玉 ― 黒崎茉莉花という最強の後方支援

戦隊ヒロインの中で、

 いちばん場数を踏んでいるのは誰か。


 それを聞かれたら、多くの者が迷わずこう答える。

 黒崎茉莉花、と。


 北九州市小倉北区出身、二十八歳。

 九州の血がそのまま顔に出たような、彫りの深い目鼻立ち。

 笑えば華やか、黙れば近寄りがたい。

 だが本人は言う。


「怖がられるほど大した人生、送っとらんよ」


 ――それは完全に嘘である。


 茉莉花は、戦隊ヒロインきっての苦労人だった。


 父親はギャンブル狂いのアル中。

 家にいた記憶はほとんどない。

 母と二人、いつも何かを我慢する生活だった。


「父親? 写真もないし、顔も知らん」

 そう言って笑うが、笑い方が妙に軽い。


 高校卒業後、地元企業に就職。

 二十一歳で結婚。

 二十三歳で男の子――**大翔ひろと**を出産。


「この辺で“普通の幸せコース”やと思ったんやけどね」


 だが現実は、普通から一気に外れる。

 夫のDV。

 耐えに耐えて、二十四歳で離婚。


 シングルマザー。

 子ども一人。

 金はない。実家も頼れない。


 選択肢は、少なかった。


「夜の街に行ったら堕ちるって言う人おるけど」

 茉莉花は言う。

「ウチは、あれで這い上がったんよ」


 最初は小倉。

 次に、より条件の良い中洲へ。


 最初は水割りの作り方も覚束なかったが、

 人を見る目、空気を読む力、場を回す技術。

 それらは、修羅場の数だけ磨かれた。


 気がつけばNo.1。

 気がつけば、チーママのような立ち位置。


 若いキャストの愚痴を聞き、

 客の機嫌を整え、

 店全体のバランスを見る。


「戦隊ヒロインより、よっぽどチームプレーやったかもね」


 そんな茉莉花に目をつけたのが、隼人補佐官だった。


「この人、場を壊さない」

「いや、壊れそうな場を立て直す」


 直々のスカウト。


 だが茉莉花は即答しなかった。

 年齢。

 シングルマザー。

 子ども。


 何度も断った。


 だが最後の一押しは、意外なところから来た。


「ママ、カッコエエやん」


 息子・大翔の一言だった。


「……それで決まり」

 茉莉花は笑った。


 戦隊ヒロイン参加後、

 彼女はすぐに“特殊な立ち位置”を確立する。


 誰の悪口も言わない。

 誰の秘密も暴かない。

 だが、全員の本音を知っている。


 最初は警戒していた遥室長も、

 水商売という経歴を理由に距離を取っていた。


 だが、ある日ぽつりと聞いた。


「…あの人、誰にも言わんのですね」


「言わんよ」

 茉莉花は即答した。

「言うたら壊れる関係って、あるけん」


 その一言で、評価は変わった。


 今ではヒロインたちにとって、

 茉莉花は相談役であり、避難所であり、現実係だ。


「悩み? あるある」

「失敗? 誰でもする」

「人生? まあ、だいたい思い通りいかん」


 それを全部、笑いに変える。


 美月は言う。

「この人おったら、どんな修羅場でもなんとかなる気する」


 綾乃は静かに頷く。

「底が見えへん人どす」


 黒崎茉莉花。

 戦わない。

 叫ばない。

 だが――一番折れない。


 そして今日も、

 ヒロ室のどこかでこう言う。


「まあまあ。人生、まだ途中やけ」


 それが、

 最強の後方支援だと気づいた者から、

 彼女に頼るようになるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ