表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

287/477

ヅラか地毛か粉か──その結論を、チーママが一刀両断  ― 黒崎茉莉花、ヒロ室を制圧する ―

新橋のヒロ室ミーティングスペースは、その日、会議という名の戦場だった。


 本来ならば、任務後の簡単な情報共有と次回イベントの段取り確認。

 そのはずが、開始三分で話題は完全に逸脱した。


「――だから! あれは絶対に地毛や言うてるやろ!」

 机を叩く赤嶺美月。

「年齢の割に生え際が自然すぎるんや! あんなヅラあったら逆に教えてほしいわ!」


「美月はん、それは幻想どす」

 涼しい顔で返す西園寺綾乃。

「人間、金と地位を手に入れはると“自然なヅラ”に辿り着かはるもんどす」


「しかも左右の分け目、毎回微妙に違うやろ?」

 彩香が資料写真をスマホで拡大する。

「これが“日替わり装着”の証拠や」


「ちょっと待って」

 真央が割り込む。

「その二択、危険じゃない?」


 一同が見る。


「粉系よ」

 真央は真顔だった。

「地毛とヅラの間に存在する、第三勢力」


「……あっ」

 ひかりが手を叩く。

「風が吹いた時、妙に“静止”してた気がする」


「確かに」

 麗奈も頷く。

「照明当たった時、反射が均一すぎた」


 ホワイトボードに書かれる大きな文字。


《粉派、台頭》


「いやいや!」

 みのりが慌てて手を振る。

「地毛派の立場も聞いてよ! あの人、汗かいた時も崩れてないよね?」


「それは粉の性能や」

 真央が即答。


「私、あの人の後頭部の“丸み”が好きです」

 詩織がぽつり。

「地毛じゃないと、あの柔らかさは出ません」


「でも詩織、角度によって“被せ感”あるよ?」

 美紀が冷静に突っ込む。


 さらにカオスは広がる。


「ヅラ派やけどな、あれは“勝ち組用ヅラ”や」

 のどかが腕を組む。

「安モンと一緒にしたらいけん」


「せやせや」

 麻衣も同調。

「プロの仕事を感じる」


「そもそもヅラかどうか詮索するのが野暮」

 陽菜が真面目に言う。

「人の努力の結晶かもしれないじゃない」


 完全に収拾がつかない。


 その瞬間、ドアが開いた。


「お疲れさまです」


 入ってきた隼人補佐官は、なぜか顔に絆創膏を貼っていた。


「……補佐官、その顔どうしたん?」

 美月が即反応。


「え? ああ、これは……久しぶりにアメフトのタックル練習を――」


「嘘」

「嘘どす」

「絶対違う」


 三方向同時否定。


「それより」

 隼人補佐官は話題を変えるように後ろを振り返った。

「今日は新しい方を紹介します」


 そこに立っていたのは、

 派手すぎず、しかし一目で“場を知っている”と分かる女性。


「北九州・小倉出身。黒崎茉莉花さんです」


「よろしくお願いします」

 柔らかい小倉弁。


 空気が、すっと落ち着いた。


「……で?」

 茉莉花は状況を一瞬で把握した。

「今の議題、何?」


「I田社長のヅラ疑惑です!」

 彩香が即答。


「なるほどねぇ」

 茉莉花は笑って、少し考えた。


「人にはね」

 静かに言う。

「知られたくないこと、ひとつやふたつ、あるとよ」


 一同、沈黙。


「それを“知ってるけど知らんふりする”のも優しさやけ」

 茉莉花は続ける。

「どっちにしても、イケオジやろ?」


 数秒の静寂。


 そして――爆笑。


「完全論破やん!」

「次元が違う!」

「ヅラ論争が人生論になった!」


 美月が腹を抱えて言った。

「この人、強いわ」


 茉莉花は肩をすくめた。

「ほな次。人生相談、誰から行く?」


 その日、ヒロ室は知った。


 論争を終わらせるのは、証拠でも正義でもない。

 人生を一回転した女の、一言である。


 なお、隼人補佐官の絆創膏の真相は、

 最後まで誰も信じなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ