応援も正義もワンセットや!
「はぁ〜……やること多すぎて手ぇ回らんっ!」
チア練の汗をぬぐいながら、美月は体育館の隅で水をがぶ飲みした。
都市対抗野球・本番に向けて、チアチームは日々練習に明け暮れていた。
応援フォーメーション、フラッグ演出、立ち位置の確認――すべての流れを完璧に頭に叩き込まねばならない。
しかも美月は、五回裏終了時のヒロインショーも担当する特別枠。
応援席で跳ねてたと思ったら、戦隊衣装に早替えしてステージに上がり、子どもたちを沸かせるという、
なかなかの“正義と応援の二刀流”。
「なんでうちだけこない忙しぃねん……」
思わずぼやきながらも、
戦隊衣装でリハーサルのステージに立った瞬間、美月の顔がふっと明るくなった。
「……あれ? 楽しいかも……」
まばゆい照明。広がるスタンド。誰もいない客席に向かって手を振ると、
まるで大観衆の子どもたちが返してくれるような気がした。
「応援って、届けるもんやろ? ヒロインも一緒や。
ほな、“届ける応援ヒロイン”って最強ちゃうん?」
体育館でのチア練習後、彼女は一人でドーム会場のステージ練習にも通い始めた。
仲間に頼んで音源を用意してもらい、
「いざとなったら、子どもたちにも“かめはめ波”とか“正義ポーズ”させたら盛り上がるやん!」とノリノリ。
演出ノートには「ヒロインポーズ①:子ども全員で!」「ポーズ②:大人にもウケるやつ!」などと書き込み、
チアの合間にマジックで戦隊のポーズ練習を始める姿は、もはや文化祭実行委員長のノリだ。
「応援も戦隊も、みんなと一緒に楽しむんが一番や!」
大変だけど、楽しみ。
ハードだけど、やりがい。
そして――「うちにしかできんこと」が、ここにはある。
東京ドームのステージで“正義”を振りまくその日を思い浮かべて、
赤嶺美月は今日も元気に汗をかいていた。




