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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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279/472

理解されなかっただけ、という病

琵琶湖畔の夜は、やけに静かだった。

昼間の喧騒が嘘のように、イベント会場の撤収を終えた控室には、冷めたペットボトルと疲労だけが残っている。


佐々木玲香は、スマホの画面を見つめていた。

「戦隊ヒロインサミットInびわ湖」――初参加にして、完全敗北。

声援は他人に、拍手も他人に、サイン会の列は途中で消えた。


だが、玲香は自分に言い聞かせる。


――理解されなかっただけ。

――わたしのステージは、まだ早すぎた。


そう思った瞬間、スイッチが入った。


その夜、玲香のSNSは覚醒する。

まずは黒背景に白文字のポエム。


「“人気”と“価値”は、必ずしも比例しない。」


いいねは少ない。

だが玲香は続ける。


「本物は、静かに孤独の中で磨かれる。」


ハッシュタグは無駄に多い。

#本質

#真実

#理解者求む

#戦隊ヒロインの裏側


翌朝、さらに加速する。


「数字に踊らされる日本のエンタメに、未来はあるのか。」


完全に中身の薄い社会派だった。

だが本人は気づかない。


コメント欄は、即座に割れた。


「誰?」

「急にどうした」

「イベントで滑った人?」


一方で現れる親衛隊。


「玲香ちゃんは正しい!」

「わかる人だけわかればいい!」

「浅いファンは去れ!」


地獄だった。

炎上ではない。

だが火種が湿ったまま燻り続ける、最悪の状態。


控室では、他のヒロインたちがこの話題を完全スルーしていた。


「……見なかったことにしよ」

小春は小声で言い、

「触れたら負けやね」

と真央が頷く。


みのりは「SNS怖いねぇ」と言って話題を変え、

美音は静かにスマホを伏せた。


誰も止めない。

誰も擁護しない。


それが一番残酷だった。


数日後。

遥室長が玲香を呼び止める。


叱責はない。

声も穏やかだ。


「SNSで発信すること自体は、止められないわ」

「でもね……みんな、見てるから」


“みんな”という言葉が、

玲香の胸に妙に重く落ちた。


「応援してる人も」

「静かに距離を取ってる人も」


遥室長は、それ以上言わなかった。

だからこそ、余計に刺さる。


その夜。

玲香は、また投稿しようとして指を止める。


画面には、未送信の文章。


「理解されない才能ほど、強いものはない。」


投稿ボタンの色が、やけに赤く見えた。


――本当に、そうなのか。

――それとも、ただ……届いていないだけなのか。


答えは出ない。

だが、SNSの通知音だけが、無機質に鳴り続けていた。


井の中の蛙は、

まだ空の広さを知らない。

だが、水面に映る自分の姿が、

少し歪んで見え始めていた。


物語は、ここからさらに厄介な方向へ転がっていく。

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