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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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276/530

仙台で一番、世界で一番(※本人談)

佐々木玲香は、最初から高飛車だったわけではない。


むしろ逆だ。


仙台市内のどこにでもある住宅街。

朝は母に急かされ、夜はスマホをいじりながら寝落ちする。

クラスでも目立たず、騒がず、前に出ない。


本人いわく、

「存在感は…中の下?」


どこにでもいる、

やや地味で、やや大人しくて、自己主張が苦手な女の子だった。


それが変わったのは、高校二年の秋。


事件は、

友人の軽いノリから始まった。


「ねえ玲香、

 ローカル雑誌の“仙台で一番可愛い女子高生”って企画あるんだけど、

 応募しといたから♡」


「……は?」


玲香は本気で驚いた。

というか、半分キレた。


「勝手にやめてよ!

 ああいうの、目立つし!」


だが、

その数週間後――


結果発表。


一位:佐々木玲香(仙台市・○○高校)


コンビニの棚に並ぶ雑誌。

自分の写真。

知らない人からの「可愛い!」というコメント。


ここで、

人間の脳は致命的な誤作動を起こす。


(……え?

 私、可愛いの?)


いや、

「可愛い子が集まる中でたまたま一位」

という現実的な思考は、

この時点ですでに消滅していた。


代わりに芽生えたのは、

根拠なき確信。


(仙台で一番ってことは、

 東北で一番…?

 東北で一番なら、日本でも…?

 え、世界…?)


ここからが早かった。


服装が変わる。

話し方が変わる。

鏡を見る時間が増える。


そして何より――

自己評価だけが異常にインフレする。


「私って、素材は良いんだよね」


誰に頼まれたわけでもなく、

誰かに否定されたわけでもない。


だが玲香は、

“認められた”という一度の成功体験を、

人生の絶対値だと勘違いしてしまった。


大学進学後、

ローカルタレントとして活動を始める。


情報番組のレポーター。

商店街のイベント司会。

地元ではそこそこ顔が知られる。


すると、

彼女の中で計画が完成する。


(まずは地元で足場を固める)

(次に東京)

(全国区)

(最終的に世界)


その途中経過として、

玲香が目を付けたのが――

戦隊ヒロインプロジェクトだった。


(知名度、ある)

(メディア露出、ある)

(ヒーローもの、海外ウケ良さそう)


――完璧。


(ここを踏み台にすればいい)


こうして誕生したのが、

自己顕示力とプライドの塊・佐々木玲香である。


本人は、

努力しているつもりだ。


常に笑顔。

常に前向き。

常に計算。


だが問題は、

その計算が自分基準でしかないことだった。


戦隊ヒロインの中には、

命を張った経験を持つ者もいれば、

地道に信頼を積み上げてきた者もいる。


だが玲香は、

それを「背景」としてしか見ない。


(私の方が華がある)

(私の方が未来がある)


――そう、信じて疑わない。


それが、

「仙台で一番可愛い女子高生」という

たった一度の称号が生んだ、

最大の副作用だった。


だが。


物語は残酷だ。


“勘違い”は、

必ず修正フェーズを迎える。


そしてその修正は、

たいてい本人が一番恥ずかしい形でやってくる。


佐々木玲香は、

まだそれを知らない。


自分が今、

どれほど見事な助走をつけているのかを。


――転ぶために。

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